【2020年版】ビルメンテナンス・ビル清掃の業界動向!
2020.03.11
業界コラム
効果的な事業戦略を立案するためには、的確な業界動向の調査が欠かせません。
そこで、ここではビル清掃・メンテナンス業界の動向についてまとめました。2020年の夏のオリンピック以降も業績を上げていくためにも、ぜひ業界の動きについてチェックしてください。
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ビルメンテナンス業界全体の動向
ここではまず、ビルメンテナンス業界全体の動向についてみていきましょう。
市場環境は2019年に引き続き良好
ビルメンテナンス業界の市場環境は、日本の景気とともに変化してきました。1990年代前半までは年率数%ほどの安定した成長率を維持していましたが、その後は横ばいあるいは微増傾向となりました。
しかし、その後に都市部において再開発が盛んに行われるようになると需要が増大し、鈍化していた成長率が再度上向きになります。
そんな折、日本および世界を襲ったのがリーマンショックです。これによって景気が悪くなるとビルメンテナンス業界の市場環境も悪くなりました。この思わしくなかった市場環境はしばらく続きましたが、ここ数年ではかなり持ち直し、市場環境は再び良好となりつつあります。2020年も好調な市場環境は続くというのが大方の見方のようです。
受注価格と最低賃金の低下
良好な市場環境の中でビルメンテナンス業界の売上高は安定しており、オフィスの空室率は低水準となっています。しかし、その一方で多くの中小ビルメンテナンス企業は難しい状況に直面しています。
その理由の1つが、受注価格の低下です。ビルのオーナーは多くの場合は法人であり、経営そのものが厳しくなっているケースも少なくありません。そして、コスト削減のためにビルメンテナンスコストを抑えるのは王道の手法となっています。そのため、全体での売上高が安定している反面、受注価格は低下傾向が続いているのです。
また、最低賃金の低下もビルメンテナンス企業に大きな影響を与えています。ビルメンテナンス企業で正社員を多く採用することは珍しく、全体として5割以上はパートなどの非正規雇用者となっています。そのため、最低賃金の上昇は人件費に大きくに影響します。しかし、企業間で激しい競争が起きている現状では、人件費がかさむからといって受注価格を上げることはできません。
その一方で、それは高い技術のある一部の企業は、業務の差別化によって受託額の増額を目指す企業もありますが、。
若年層・マネジメント層の確保・育成が課題
ビルメンテナンス企業が抱えている最大の課題は、人手不足です。すでに人手不足は慢性化しており、さらに従業員は高齢者の割合が高く、若年層やマネジメント層を一刻も早く確保・育成する必要があります。
しかしながら、若い人材の確保は簡単ではありません。ビルマネジメント企業の事業は警備業務から清掃業務まで幅広くありますが、3K(きつい、汚い、危険)のイメージも強く、人材確保のためには業界のイメージアップが欠かせないといえます。
景気が良くなり業務量が増えることは、企業にとってプラスのことに思えます。
しかし人手不足の問題はさらに深刻になるため、各企業は人手不足をカバーするための対策を講じる必要があるといえるでしょう。
警備業務の成長力の増大
ビルメンテナンス業務の中でとくに凄まじい成長力を見せているのが、警備業務です。
不況は多くの業界でマイナス要素となりますが、不況になると治安が悪くなるため、警備業務においては幅がより広がっていきます。
このことは、住宅レベルでセキュリティ意識が高まっていることからも明らかだといえるでしょう。
大手企業と中小企業の格差の拡大
ビルメンテナンス企業でもICT(情報通信技術)が始まっており、これによってサービスを効率化することができます。
そして、ビルメンテナンス業務の中でICTによって効率化しやすいものが警備業務です。ICTを導入して機械警備を行うことによって業績を伸ばしている大手企業は少なくありません。
これによって、大手企業と中小企業の格差は今までよりもさらに拡大しているといえます。
海外進出を試みる企業も
人手不足に悩まされる企業が多い一方で、一部の企業ではさらなる事業拡大のために海外進出を試みています。
国内の建物には限りがあるため事業を大きくするには限りがありますが、中国をはじめとした国々に手を広げれば可能性は大いに広がります。
またビルメンテナンスに留まらず、ビルメンテナンスを含む不動産管理をまとめて請け負う「ファシリティマネジメント」を視野に入れている企業もあります。
ビルメンテナンスの清掃事業の動向
ビルメンテナンス業務には幅広い種類があり、その中でも重要だといえるのが清掃事業です。ここでは、ビルメンテナンスの清掃事業の動向についてみていきましょう。
売り上げで最も高い割合を占めているのは清掃事業
ビルメンテナンスを行っている会社の売り上げ構成をみると最も高いのが一般清掃であり、約60%を占めています。
その後は、設備管理、警備、その他のビルメンテナンス業務と続きます。このことから、設備管理や警備などの業務が好調でも全体として好調だとは限らないといえます。
ビルメンテナンス業務で業績を上げるためには、清掃事業に力を入れる必要があるといえるでしょう。
技術の発達による業務改善
人間の労働力に頼る割合が高い「労働集約型」だと言われる清掃事業ですが、近年では技術の発達によって業務効率が大きく改善されつつあります。
搭乗式の床洗浄機が導入され、モップの形が変わり、さらに階段やエスカレータを短時間できれいにする方法も考案されました。
また床が汚れにくいワックスの開発や掃除しやすい床材の開発もされており、ひと昔前に比べると作業効率は大幅に上がったといえるでしょう。
さらにビル清掃において注目されているのが業務用掃除ロボットです。1980年代には、大手不動産会社が床面清掃ロボットを開発しました。
その後も業務用掃除ロボットは進化を続けており、ビル清掃において業務用掃除ロボットを使うのが当たり前になる将来もそう遠くはないといえるでしょう。
2021年、オリンピック以降の業界はどうなる?
ビル清掃・メンテナンス業界では様々な課題がありますが、その中でも一番に対処すべきはやはり人材不足だといえます。とはいえ、人材不足の解消は至難の業です。特に少子高齢化が進んでいる昨今では、どの業界においても若い人材の確保が難しくなっています。ビル清掃・メンテナンス業界は、十分に若い人材を確保するために企業は非常に大きな努力が必要だと考えられています。
そこで必要となるのが、作業の効率化です。効率的に清掃作業を行うことによって、人材不足を補うことができます。清掃作業において生産性を上げるのは限界があるように感じられますが、清掃用具を替えるだけで作業時間が大幅に短縮できるケースも多々あります。需要が減らない中で慢性的な人材不足に対処するためには、清掃用具への投資が欠かせないといえるでしょう。
業界の動向を把握したうえで対策することが大切
業界の動向は時代の流れとともに変化するため、十分に利益を上げて会社を持続させるためには動向を把握したうえでの対策が欠かせません。そして、ビル清掃・メンテナンス業界においては人材不足の問題がとくに顕著だといえます。数年後、十数年後の状況も見据えたうえで、早め早めに対処を行うことが大切だといえるのではないでしょうか。