もしも介護が必要になったら? 今から知っておきたい「介護」に必要な最初のステップ
2021.03.24
業界コラム
ここ数年、よく耳にするのが高齢化社会というキーワード。
日本では100歳を超えた高齢者が7万人を超えたというニュースが話題にもなりました。元気な高齢者が増えた印象もありますが、やはり年齢とともに心身の様々な機能が衰えてしまうのも事実です。
年齢を重ねたご両親が、日常生活のなかでちょっとした“困りごと”に直面していることはないでしょうか。そんなときに、“介護”という言葉が頭に思い浮かぶこともあると思います。
また、高齢者だけでなく働き盛りの40代から60代といった年齢の人でも、突然の病気や事故により介護が必要になる場合があります。特に、脳の血管が突然つまってしまう脳梗塞は年々増加傾向にあり、処置が遅れると手足の麻痺や言語障害など重大な後遺症が残る可能性が非常に高い病気です。
「介護」はまだまだ先……そう思っている今から、「その時」に備えた基本的なチェックポイントを知っておきましょう。
介護は家族だけでは支えきれない――まずは相談を!
介護が必要になるかもしれない、そう思う瞬間はどんな時でしょうか。
急な病気や事故による後遺症などで介護が必要になる場合を除くと、やはり年を重ねることによる筋力の衰えや認知機能の低下が大きな要因となります。今まで当たり前にできていた日々の生活に関わる様々なことが少しずつ不便になっていく……でも、小さな変化はなかなか自覚しづらいものです。
高齢にさしかかった家族の変化にできるだけ早く気づけるよう、コミュニケーションが大切です。もしもの時に気軽に相談できる土台を普段から作っておくことを心がけたいですね。
普段からかかりつけの医師をつくっておくことも、心強い味方になります。
そして、日常生活のなかで誰かの手助けが必要になった時は、まず専門機関に相談することをオススメします。介護は家族だけでは決してできないもの。プロの知識や手を借りて、やっとこなせるものなのだという意識をまず持っておきましょう。
「なんでもない」時から頼りになる相談窓口を知っていますか。
65歳以上の高齢者の介護や医療、保健、福祉などさまざまな面を支える総合的な相談窓口があることを知っていますか?それが『地域包括支援センター』です。
地域包括支援センターは、介護保険の窓口としてまず最初に相談する場所というイメージを持っている人も多いはず。しかし、本当に介護が必要になる前から相談をすることが大切です。センターでは、運動機能や認知機能を低下させないための介護予防サービスの紹介や、生活のなかでの困りごとなどについて、専門知識をもった職員が相談に乗ってくれます。
高齢者本人だけでなく、支える家族からの相談も可能です。
早いうちからの相談が介護予防にもなり、本人にとっても家族にとっても体や心の負担を軽くできるかもしれません。
地域包括支援センターの場所や電話番号は、市役所の保険課やホームページで調べられます。ここで注意してほしいのは、必ず支援対象者が住んでいる場所のセンターに問い合わせること。離れた場所に住む高齢者のことを相談する場合は、問い合わせ先を間違わないよう気を付けてくださいね。
介護が必要だと感じたら、要介護認定を考えましょう。
日常生活を安全に過ごすことを不安に感じ始めても、住み慣れた自宅で過ごしたいと思う高齢者は多いです。しかし車椅子や介護用ベッド、トイレや浴室の手すり設置などの福祉用具の費用、デイケア等の介護サービス利用に関する出費は決して少なくありません。
そんな時に心強い制度は『介護保険』です。対象となるのは65歳以上の高齢者、40歳~64歳で特定疾患による介護が必要な方。介護保険サービスを利用するには、まず市町村に申請をしたのち「介護認定」を受けなければなりません。
介護保険の申請に関する相談は、市町村の福祉課、地域包括支援センターで行うことができます。申請するには何が必要か、どういった手順で行われるかなどの相談から、実際の申請までしっかりとサポートしてくれます。
無事に申請ができたら、次のステップは市町村の職員による「要介護認定調査」が行われます。
要介護認定調査、その前にしっかりと準備を。
「要介護認定調査」とは、対象者がどれくらいの介護を必要としているのかを調査することです。職員が自宅まで出向き、対象となる高齢者の持病や生活に関することをヒアリングします。
ただ、初めて会う職員からたくさんの質問をされてしまうと、思っている事がうまく伝えられなかったり、できない事をつい「できる」と応えてしまう人も少なくありません。
認定調査の結果は、その後の介護サービスを利用するうえでとても重要です。できるかぎり、対象となる高齢者本人だけでなく家族も一緒にヒアリングをうけましょう。
また、本人・家族どちらも認定調査の前に準備をすることも大事です。
ここで慌てないためのポイントをいくつかまとめてみました。
「今」を知るためのクエンスチョンをまとめてみましょう。
・高齢者本人がいまどんな状況で暮らしている?
住環境(間取りや階段・手すりの有無など)、家族と同居か別居か、別居の場合はどれくらいの頻度で家族が手助けにやってきているのかなど。
・いま、どんなことに不便だと感じている?
入浴、着替え、買い物、服薬、寝食など日常生活のなかで何が「できない」「やりづらい」と感じているのかなど。高齢者本人が困っていること、介護を手助けする家族が困っていることを別々に書きだしておくと伝わりやすいです。
・どんな介護を行っている?家族が対象者を手助けしている場合、どんな時にどんなことをしているのか?
特に認知症などで本人が正しく受け答えできない場合などは、家族が普段からどんな介護をしているのか、どんな症状があるのか、何に困っているのかなどまとめておきましょう。
「これまで」をまとめておきましょう。
・今までどんな病気や症状、怪我があったのか?
認定調査は医師の診断書なども判断基準となりますが、気になることは出来る限りリストアップしておきましょう。お薬手帳なども用意しておくと、どれくらいの量の薬を服薬しているのかも把握しやすいです。
・今までにどんなことで困ったことがある?
高齢者本人が、病気の症状や困っていることを他人に言いたくないと思ってしまうことは少なくありません。家族がもし本人の性格やこれまでの行動でそういった傾向を感じていたら、メモにまとめて調査員に渡すことも大切です。
「どんなことを聞かれるのか」を知っておきましょう。
要介護認定調査では、約50項目ほどの質問がされます。内容は大まかに下記の5つに分類されています。
①身体に関する質問(麻痺や収縮の有無、立つ・座る・歩くなどの機能、視力・聴力など)
②生活に関する質問(移動、食事、排泄、外出、入浴、着替えなど日常生活で必要な機能)
③認知に関する質問(意思伝達、生年月日などの認識、記憶、認識に関する機能)
④精神や行動に関する質問(事実と異なる認識や行動、他者への抵抗の有無など)
⑤社会生活に関する質問(金銭・服薬の管理や、買物、調理、コミュニケーションなど)
厚生労働省のホームページで「認定調査票」と検索すると、実際に使用されるテキストなども公開されていますので、ぜひ一度チェックしてみてくださいね。
高齢化問題は、家族や自分にいつか必ずやってくるものです。「いつか」のための備えを、「いま」から少しずつ心に留めておくこと、大切なのかもしれませんね。