その場所、空いている?~アナログ&ハイテクで解決される「気づかないコスト」の解決法
2020.06.18
業界コラム
トイレの前にずらりと人が並んで、なかなか動かない。
予想外に人が集まる場所――人気のテーマパーク、人がたくさん集まるイベントやコンサート会場・劇場、乗降客の多い主要な駅などではよくそんな場面に出くわします。
同じように「動かない」高速道路の渋滞の原因は、運転者も気づかないほどの道路の上り坂のせいでスピードが落ちるからだと言われています。
実はトイレでも同じことが起きています。
女性用トイレに顕著ですが、個室がたくさん用意されていても「空いている」ことがすぐにわからないせいで、並んでいる人の動きがわずかに止まり、行列の動きが鈍くなっているのです。
ほんの数秒「どこが空いているのかな」と考える……気づきにくいコストが、長い行列を生んでしまう一因なのかもしれません。
ここ数年、様々な「気づかないコスト」を解決する方法が考えされてきました。
アイデアにびっくり!どこでも取り入れられるアナログな方法。
一日約40万人ほどの乗降客がいるとされるJR京都駅。
観光地ともあって、海外からの渡航客も大変多い場所でもあります。そんな京都駅のトイレの個室に設置された「空室状況がすぐわかる方法」が、話題になりました。
その方法とは、トイレのドア上部に「〇」と「×」が描かれたプレートをくっつけること。
トイレのドアが開いている状態では「〇」、閉じている状態では「×」が見えるように設置され、トイレ内で並んでいる人はどの個室が空いたのかすぐわかります。また記号で描かれているため、日本語がわからない海外の人にも理解しやすい案内になっています。
もちろん京都駅だけでなく、主要な駅や劇場、テーマ―パーク、パーキングエリアでも取りれられています。
この方法は設置に大きなコストがかからないため、コンサートやミュージカルなど短い時間に多くの人がトイレを使用する際に作られる簡易トイレにも採用され、実際に人の列の動きが早くなったそうです。
実に簡単でアナログなアイデアではありますが、「気づかないコスト」は大きく解消されました。
Iot化トイレは、10年前から始まっていた
アナログな方法とは正反対に、最先端の技術で「気づかないコスト」を解決する方法は、実は10年前ほどから始まっていたと言われています。
Iot(InternetofThings)は「モノのインターネット」と呼ばれ、モノがインターネット経由で通信することを意味しています。ここ最近ではスマート家電などが身近になってきました。そのシステムを利用してトイレの空室状況を共有できるようにしているのが「Iotトイレ」です。
デパートなどで発生するトイレの混雑状況。客数の多いフロアでは行列ができているのに、他の階ではガラガラ……というようなことがよくあるそうです。デパート側に寄せられる意見でも、トイレが混んでいて困ったという声は少なくありません。
しかし混雑の多いフロアのトイレだけを改装して個室数を増やすことは、あまりにコストが多く不可能です。そこで使われたのがIot技術でした。
各階のトイレのドアに付けられたセンサーの情報をリアルタイムで集め、スマートフォン等のアプリで、どの階のトイレが空いているかすぐにわかるようにしました。
これにより近くの階が混んでいても、他の空いている階がすぐにわかり移動することができます。アプリを使用しない年齢層の人や、たまたま立ち寄った人たちのためには、トイレの前にデジタルサイネージと呼ばれる電子看板での案内がされます。
もちろんデパートだけあって、常にトイレの空室状況だけが表示されているわけではなく、混雑していない階では広告が流れるそうです。
このようにIotとアプリでトイレの空室状況がわかるシステムは、利用者への便利さだけでなく、ビルや施設の管理者の利便性を高めるのにも一役買っています。
トイレの利用状況から、トイレットペーパーやハンドソープなどの補充・清掃間隔を予測することができるのです。
これにより清掃担当者はすべてのトイレをまわるのではなく、より適切なタイミングで清掃業務が行えます。昨今の人員不足による負担を、少しでも軽くできる方法できることでしょう。
Iotトイレはその需要が浸透してきたようで、簡単に導入できるシステムも開発する会社も増えてきました。
トイレのドアにセンサーを設置し、情報を共有するソフトを使用することで、今使っているオフィス等のトイレがあっという間にIotトイレになるのです。
「どのトイレが空いているか?」という疑問から、「どのようにトイレを管理すると効率的か」が見えてくる……人の心の動きと技術が見事にマッチングしたシステムです。
トイレだけじゃない、「わかりやすさ」は「効率化」に繋がる。
トイレの空室状況と同じシステムが、実はオフィスでさらに便利に生かされています。
それは会議室などの空室状況をすぐにわかるようできること。オフィスでの小さなイライラポイントとしてよく聞くのが「会議室が空いていない!」でした。
誰が、いつ、どこの会議室をいつまで使うのか?もちろん皆きちんと予定を出し、使用予約をとっているはずです。アナログな方法だとホワイトボードに書きだしたり、社内SNS等で予約を共有している会社は多いでしょう。
しかし急な予定変更を記入し忘れて、誰も使っていないのに予約がいっぱいになっていた……なんてこと、よくありませんか?移動中などパソコンを使えない状況で予定を変更したり、確認することができないことも。
スケジュールの調整や確認のための時間、1回はわずかであっても積み重なるとなかなかのコストになってきます。
これを解決するのが、Iotを使った空室状況の把握システムです。トイレと同じように、大がかりな工事などは必要なく、センサーをドアや照明につけることでどの会議室が実際に使用されているかすぐに共有できます。
スマートフォンやタブレットでもアプリを使って共有できるとさらに便利なので、もしも今からオフィスに導入される際は、実装されている機能をよく比べて選んでみてくださいね。
便利さは新たな働き方、シェアオフィスでも大活躍。
空室状況をIot化でわかりやすくするシステムは、一般的な会社だけでなく、シェアオフィスやコワーキングスペースでも役立っています。
昨今注目されているシェアオフィス、コワーキングスペースとは、事務所や特定の職場を持たないフリーランスや、社外で仕事をする人、テレワーク等の一環として使用する人など、多様な働き方の人達が使用するオフィスです。
個室タイプ、大まかに座席が置かれているタイプ、通常のオフィスのように仕切りと机があるタイプなどがありますが、一つのオフィスを不特定多数の人達が利用します。
不特定多数の出入りがあること、使用時間を区切って利用する人も多いので、会議室などが空いているかどうかをよりしっかりと把握しなければなりません。
また受付やオフィス内の清掃など、ここでも管理者のコストを減らすために、大規模なシェアオフィスでは、積極的にIotシステムを使っているところが多いそうです。
小さな「こうなったらいいのに」から生まれたことがどんどん進化して、より役立つ技術に生まれ変わっています。日々の気になることを解決する方法が、大きな効率化へのヒントかもしれません。