操作・検知・監視・通信。多分野で活躍するIoTの4機能
2020.08.21
業界コラム
最近ニュースなどで「IoT(Internet of Things)」という言葉がよく使われています。IoTとはパソコン類以外のモノをインターネットに接続することです。身近な製品といえば「カーナビ」で、高速道路の渋滞状況がリアルタイムで把握できるのはIoTを交通に活用した例だといえます。しかしながら、IoTの全貌を正確に理解できている人は、それほど多くないかもしれません。今回はIoTが持つ4つの機能、使われている分野や製品、実現できることなどを分かりやすく解説します。
IoTの機能1:操作
1つ目の機能は「操作」です。これは「離れたモノを遠隔で操作すること」を指しており、IoTの代名詞でもあります。例えば、スマホやタブレットなどの端末を用いて、外出先から部屋のエアコンの電源を入切することができるのです。また、温度・風量などの詳細設定も可能など、まるで家にいるような操作ができるのが特長です。以上のように「操作」は生活を便利にする目的で活用される傾向があるようです。
■その他「操作」の活用例
・自動ペットフードサーバー
飼い主の留守中に、ペットに適切な量のエサをあげることができます。また、ペット用のカメラを設置することで、ペットの様子を見ながら、スマートフォン用アプリを介して臨機応変にサーブすることも可能です。操作だけでなく安否確認もできるので、ペットの健康を守る上で有用な機能だと言えるでしょう。
・各種家電の制御
照明機器の入切、給湯器、風呂釜、炊飯器、ドアやシャッターの開閉などの家電を遠隔で制御できます。自宅はもちろん、工場、ビル内、店舗内、病院内、学校内などさまざまな場所で活用できます。
IoTの機能2:検知
2つ目の機能は「検知」です。これは「モノや人の動きから現在の状況を知ること」を示します。例えば、バスに位置情報管理システムを導入することで、バスの動きから現在の状況を推測できるのです。このシステムは都心部にて既に導入され始めており、駅の電光掲示板に到着予定時刻・遅延状況などが表示されるようになっています。バスの移動に限らずモノや人の動きを推測することは有効に時間を使うことにも繋がるでしょう。
■その他「検知」の活用例
・農業分野で栽培環境を調整
IoTは栽培環境の水位、温度、湿度などの変動(動き)を「検知」することができます。また、栽培環境を自動的に最適な環境に調節することも可能です。従来は日々変動する栽培環境に対して、ベテラン農家が熟練のテクニックと経験で対応していましたが、現在は人手不足が深刻です。特に農業分野は後継者不足が問題視されているので、IoTによる作業自動化は強い味方になってくれることでしょう。そうすることで若手農家が技術を習得する前に生活できなくなるという事態を防ぐことができます。
・人感センサーで消費電力を抑制
人感センサーとは人の動きを「検知」することで照明の照度調整や空調管理を行うシステムです。人感センサーの対象範囲内の人数は自動的に把握され、省エネと快適性が両立されます。オフィス、学校、病院、介護施設などに設置可能で、人の手による調整が必要なくなるのでスタッフの負担も軽減されます。
・建設現場での安全性向上
建設現場で重機や建機が人の動きを「検知」することで、接触しそうになった時には自動停止します。労働災害がIoTによって減少することが期待されているのです。
・物流サービスにおけるGPS追跡システム
従業員一人ひとりにGPS発信機を装着してもらうことで、従業員の動きを「検知」できます。そうすることで、「誰が、どこで、何をしているのか」がリアルタイムで把握できるようになるのです。情報が「見える化」されることで勤怠管理や安全管理も容易になり、管理コストの抑制が期待されます。また、従業員にトラブルがあった際には位置情報をもとに迅速に対処することも可能です。感染症蔓延の影響もあり、物流サービスの需要は大きいので、IoTによる業務の効率化が物流業界の利益に繋がる可能性もあります。
IoTの機能3:監視
3つ目の機能は「監視」です。これは「離れたモノや人の状態を知ること」です。例えば、外出時に照明機器の状態(照度など)を遠隔でチェックできます。先述の「操作」と組み合わせれば、電気の消し忘れを「監視」し、遠隔で電気を切ることも可能です。こうすることで余分な電力消費を防ぎ、節約にもつながるのです。他にも温度、湿度、気圧、騒音などの環境モニタリングも可能です。このように「監視」は情報をリアルタイムで把握できるのが大きな特長で、家庭、オフィス、工場、工事現場、農園など幅広い分野で活用されています。
■その他「監視」の活用例
・ペットの健康状態を遠隔で確認
IoT機能がある首輪を装着することで、ペットの健康状態を把握できます。商品にもよりますが、睡眠時間、歩行や走行などの運動量を記録・データ化できるので、異常があった際には早期発見できるのが魅力です。
・ユーザーニーズの把握
情報の収集がリアルタイムで出来るという「監視」の特性上、ビジネス領域にも応用可能です。その理由はユーザーの情報が収集できるからです。例えば、ある商品の利用頻度や利用時間がわかると、メーカーは消費者データに即した商品開発が可能になるのです。従来の様にマーケティングリサーチやアンケートを実施する手間がないので、人員削減と業務の効率化が図れます。
・医療機関で患者の生体データを収集
IoTシステムを医療分野に取り入れることで、継続的に生体データを得ることができるので、医療サービスの改善が期待できます。なぜならば、リアルタイムでデータが蓄積することでより正確な診断・診療を実施できる可能性が高まるからです。他にも、患者のバイタルサイン(呼吸、脈拍、血圧など)を計測し、異常値が出た際にアラートを発する機能などもあります。現場スタッフの負担軽減も期待できるので、病院と患者の双方にメリットが期待できます。
IoTの機能4:通信
4つ目の機能は「通信」です。これは「モノとモノの間でやり取りをして、複数の電子機器を動かす機能」です。例えば、AIスピーカーとエアコンを連携させておけば、口頭の指示だけで温度管理が可能なのです。この場合はAIスピーカーとエアコンの間で「通信」、つまり情報のやり取りがされている状態です。このようにモノ同士の通信によって自動的に判断・動作できるのが「通信」機能の特長です。
■その他「通信」の活用例
・信号機と自動運転車の連携で渋滞緩和
信号機が赤になると自動運転車に向けて速度を落とすように促したり、逆に自動運転車が道路の混雑具合を判断して信号機に伝達したりすることで、渋滞を緩和させようとする試みがあります。ちなみに、自動運転車の中だけでも「通信」機能は活用されています。自動運転はリアルタイムで交通情報を入手し、自身でルート設定などを行うのですが、その際に車載機器が相互に自動制御を行っているのです。以上が「通信」の概要ですが、人の判断が介さないという点で非常に注目されているようです。
IoTは既にあなたの身近で機能中
モノとインターネットを繋ぐIoTは近年急速に普及してきています。本記事で紹介したように、IoTの4機能は、既に暮らしに身近な存在になっているのです。具体的には医療、物流、製造業、農業、交通などで活用されています。今後は仕事や生活の効率化において、より一層重要視されていくでしょう。また2020年の5月にはスーパーシティ法が成立したので、AIやビッグデータといった他の最先端技術とともにさまざまな分野・業界での活躍が期待されます。