AIはいま、新しい側面を持つものへ進化している〝生成AI〟の誕生
2023.09.06
業界コラム
ビジネスのひとつのあり方として定着してきた、DX(デジタルトランスフォーメーション)。
「デジタル変革」とも呼ばれるDXは、日本でも2018年頃から推進され始めました。
インターネットを使ったツール、情報を分析するAIの発展などにより、様々なジャンルで活用されています。
そのなかでも、ここ数年注目され、技術的にも大きな飛躍があったのが、AI。
AIは、いまどんな形で社会のなかで役立ち始めているのでしょうか。
第二次世界大戦のなかで生まれた、AIの概念と歴史
AIとは『Artificial Intelligence』の略称です。
一般的には〝人工知能〟と呼ばれているAIですが、その歴史は意外にも古く、第二次世界大戦頃まで遡ります。
イギリスの数学者アラン・チューニングが、敵国の暗号を解読するための機械を開発。
このとき作られた「チューリングマシン」と名づけられた計算機械は、のちのコンピューターの基礎となる物となりました。
1956年、アメリカの科学者ジョン・マッカーシーが国際学会にて「AI(人口知能)」という言葉を始めて提示します。
そこでは、人口知能とは「知的な機械、とくに知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と定義されました。
その後、1970年代にかけて人口知能を研究・開発するブームが起き、自然言語処理プログラム「ELIZA(イライザ)」が誕生しました。
ELIZAは、現在多くの人が使う〝スマートホンなどに話しかけることで検索する〟システムの起源となった技術です。
AIの研究・開発は、インターネットやコンピューターの発展とともに進みます。
そして2000年代に入ると、AIはディープラーニングと呼ばれる〝大量のデータを蓄積し、分析する〟という技術を高めていきました。
働き手不足を解決するために活用されるAI技術
AIを用いた技術は、ここ数年さまざまな産業で活用されています。
とくに少子高齢化が進む日本では、働き手不足を解決するためにAIを取り入れる現場が増えています。
どのように取り入れられ、役立っているかの一部をピックアップしてみました。
行列・混雑を解消するために
喫煙室・会議室・トイレなど、待ち時間や行列ができやすい場所にセンサーを設置し、リアルタイムに混雑具合や利用状況を可視化します。
ほかにも、駐車場や施設内の利用者数などをAIが分析し、混雑具合を予測するシステムもあります。
商業施設、公共施設、オフィスビルなどで混雑を防ぐために活用されています。
TERAS PLACE
「TERAS PLACE」はトイレ内にセンサーを設置できるセンサーです。
トイレの個室状況が把握できるようになれば、利用者自身が空いているトイレを見つけられるようになります。
これにより、女性用トイレでの利用状況が最適化され、混雑による行列を未然に防ぐことができるでしょう。
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作業の効率可を進めるために
働き手不足が進んでいる業界のひとつに、メンテナンス・清掃業界があります。
オフィス・交通機関・商業施設など、不特定多数の利用者がいる建物の清掃は、ローテーションを組み一定の間隔で行います。
そこで、センサーを使い、利用者数やゴミ箱内の量、トイレの消耗品の残量などを感知して可視化。
リアルタイムのデータと、AIによる予測を活用してトイレ清掃やゴミ回収の巡回作業を効率可しています。
TERAS BOX
「TERAS BOX」はゴミ箱の管理をよりスマートにして、いつでも綺麗な環境を保てるサービスです。施設内の各ゴミ箱にセンサーを設置し、クラウドを通じてタブレットなどの端末で簡単に現在のゴミ箱の状態が確認可能。必要なタイミングで回収できるほか、臭いや熱などを探知する機能を搭載することで、利用者に不快な感情を抱かせない環境の構築が可能になります。
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より高い精度の診断のために
AIは医療の現場にも取り入れられています。
とくに、レントゲン・CT・MRIといった画像診断が必要な場面では、過去の膨大な診断結果を分析したAIが役立っています。
長い経験と診断数の積み重ねが求められる画像診断ですが、医師とAI分析によるダブルチェックを行うことで、より精度の高い診断を行えます。
AIの新たな側面、生成AIの登場
膨大なデータを取り込み、分析し、予測する……これまでのAIはこの技術を利用し、多岐にわたる産業で活躍しています。
しかし、いま新たな側面を持つAIが注目され始めています。
それが『ジェネレーティブAI(生成AI)』です。
生成AIは、これまでのAIと同じように膨大なデータを収集・学習・分析しますが、新たな側面として〝新しいデータ・情報を生成する〟という特徴を持っています。
生成されるデータ・情報とは、具体的には映像・画像・音楽・文章など。
今まで人間以外には難しいとされていた〝何かを生み出すこと〟に特化しているAIです。
会話型AI
会話型AIとは、質問などを投げかけるとそれに回答してくれるというシステムです。
このシステムの開発の歴史は長く、1970年代に開発された自然言語処理プログラム「ELIZA(イライザ)」から続いています。
会話型AIは、問いかけられた質問に対し、正解に近い情報を答えるというシステムでした。
また、人と人が行うような自然な対話は難しく、短い言語での受け答えが主です。
ところが、2022年11月に公開された『ChatGPT(チャットGPT)』は、これまでの会話型AIとは段違いの精度で、人と会話しているような文章を生成します。
ChatGPTは膨大な情報・表現方法を学習し、問いかけに応じて、キャッチコピーや人物のセリフ、ビジネ文書や小説・脚本、プログラミングコードなど、新たな「文章」を生み出すのです。
画像生成AI
会話型AIとともに2022年最も注目された技術のひとつが、画像生成AIです。
現在この3つのタイプの画像生成AIが、主に利用されています。
・欲しい画像の内容を、文章で打ち込んで生成する
・画像のラフを読み込ませて、完成度をあげたものを生成する
・写真やイラストなどを読み込ませて、背景など足りない部分を補足させる
とくに文章を打ち込むタイプでは、誰でも高いクオリティのイラストや、実在しているようなリアルな人物・背景を生成できることで、多くの人が利用しています。
音声生成AI
音声生成AIは、打ち込んだ文章を読み上げてくれるAIです。
いままでも文章読み上げソフトはたくさんありましたが、AIによる会話技術の分析により、人が話しているのと変わりないような読み上げを行います。
実際にアナウンサーと変わりない抑揚でニュースを読み上げ、番組内で使用されている音声生成AIもあります。
また、声のサンプルを読み込ませると、その音声で読み上げるという機能を持つものも開発されました。
音楽・動画生成AI
文章や画像と比べて、AIが生成するのはより難しいとされていたのが、音楽・動画といったジャンルです。
ですが、このジャンルにおいても生成AIは開発されています。
・鼻歌で作った音声を読み込ませて、好きなジャンルの音楽を生成させる
・欲しい感じのジャンル、雰囲気、テンポなどを文章で打ち込み、音楽を生成させる
・欲しい内容を文章で打ち込み、短い動画を生成させる
音楽や動画は、才能や技術だけでなく、作成するためには機材や資金などがかなり必要とされるジャンルでした。このため、音楽・動画生成AIはチャレンジをしてみたいという人たちにとって注目されているシステムです。
生成AIのメリットとデメリット
誰でも、予算や機材に左右されることなく「何か」を作れる生成AI。
デザインやゲーム・イラスト・動画製作、広告作成など、今まで才能や技術・手間のかかる作業が一気に短縮される――この技術はたくさんの業界で注目されています。
しかし、デザイナーやイラストレーター、漫画家、小説・脚本家・音楽家といったクリエイター、俳優・声優といった表現者などの仕事が脅かされる可能性もあります。
また、AIで生成した物に対する著作権問題や、フェイクニュースなどでの悪用というような、まだまだ解決しなければならない問題が山積みとも言えます。
生成AIは、これからも発展し多くの現場で活用されていく技術。
今後の法整備や、著作権に関する精査、メリットデメリットを理解することがより求められるジャンルです。