【ターンダウンサービス・インスペクション】ホテル・客室清掃に関わる基本用語集:2
2019.08.26
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ホテルで使用される客室清掃に関する用語には、あまり耳にしないものもたくさんありますよね。本記事で紹介するホテル用語「ターンダウンサービス」、「インスペクション」も、本当の意味を知らないという人も意外と多いと思います。
ホテル・客室清掃に関わる基本用語集の第2弾は上記の用語の意味についてご紹介します。意味を知れば、どちらもホテルの客室清掃において非常に重要であることが分かるはずです。
また、実際の具体例についてもご紹介するのでぜひ参考にしてください。
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ターンダウンサービスの意味と具体例
ターンダウンサービスとは、ベッドスプレッドやシーツを整えて客室を「寝室」の状態にするサービスのことです。
ホテルのベッドに日中かかっているベッドスプレッドは、靴のままベッドの上に横になってもシーツが汚れないようにする役割を持っています。
ベッドスプレッドは靴のまま室内に入るのが一般的な西洋文化が発祥になっており、靴を脱いでベッドに上がる風習が一般的な日本では、寝具ではなくインテリアとして主に設置されています。
ターンダウンサービスでは、夕方頃に客室清掃スタッフが上記のベッドスプレッドやベッドシーツを外して宿泊客がすぐに寝ることができる状態に整えます。
一般的に高級ホテルで行われるサービスであり、どこのホテルでもターンダウンサービスを行っているわけではありません。また、ターンダウンサービスはホテルによって内容も異なり、ターンダウンサービスの際にプラスアルファのおもてなしを用意している施設もあります。
例えば、高級リゾートホテルなどではタオルで作った花をベッドの上に置くことがあります。また、ベッドサイドにミント味のチョコレートを用意することもあります。これは、ヨーロッパでは寝る前にチョコレートを食べることで気持ちが落ち着くといわれているためです。
各ホテルでは、このような小さな心遣いをすることで満足度の向上を図っているのです。
なお、ターンダウンサービスに対してはチップの習慣はありません。宿泊客から特別なリクエストがあった場合にはチップが置かれていることはありますが、あまり一般的ではないといえるでしょう。
宿泊客が快適に過ごせるように行うターンダウンサービスですが、中には必要ないという人もいます。チェックインの際に「ターンダウンサービスはいらない」と受付に伝える宿泊客もいるので、清掃前に必ず確認することが大切です。
またターンダウンサービスを行おうとしたときに、宿泊客が客室でゆっくりくつろいでいることもあります。そのような場合は、宿泊客の都合の良いタイミングに合わせてターンダウンサービスを行う必要があるでしょう。
ターンダウンサービスを行っているホテルとしては、帝国ホテル東京が挙げられます。帝国ホテル東京はホテルオークラ、ホテルニューオータニと共に「ホテル御三家」と呼ばれる、日本を代表する高級ホテルです。
そして、帝国ホテル東京がターンダウンサービスで行うのはベッドスプレッドの取り外しだけではありません。ベッドメーキング時に、使用済みのグラス類の交換やごみの回収なども行っています。夕方の時間帯に客室をきれいな状態にすることによって、宿泊客は快適に眠りにつくことができるといえるでしょう。
出典:帝国ホテル東京公式サイト
ルーム・インスペクション(清掃点検)の概要と具体例
ルーム・インスペクション(清掃点検)とは、清掃後の客室の仕上がりや設備、備品、消耗品のチェック業務のことです。ホテルでは客室清掃スタッフが客室を掃除しますが、次の宿泊客のチェックインまでにすべてを終わらせなければいけないため、時間に追われた状態で作業することが多いです。そのため、作業に全くミスがないとは言い切れません。
しかし、客室の状態に少しでも不備があるとクレームにつながることもあります。そこで必要となるのが「ルーム・インスペクション」です。
一般的に、ルーム・インスペクションは客室清掃員以外のスタッフによって行われます。第三者がチェックすることで宿泊客と同じ目線で客室の状態を確認することができ、細かい不備にも気付くことができます。この作業を担当するスタッフは「ルーム・インスペクター」と呼ばれ、アシスタント・ハウスキーパーやフロア・ハウスキーパーが代行する場合もあります。
ルーム・インスペクションでは多くのチェック項目が用意されており、一つ一つを丁寧に確認していかなければいけません。
具体的には、以下の箇所がチェックされることが多いです。
・ベッドがきれいに作れているか
・リネン類が取り換えられているか
・便器やバスタブに汚れがないか
・床に髪の毛が落ちていないか
・ライトが点灯するか
・グラスが欠けていないか
上記以外にもチェックするべきことはたくさんあります。さらにかなりの数の客室に対応しなければならないケースが多いです。
そのため、一見簡単そうに思えるルーム・インスペクションですが、効率的かつ漏れなくチェックするためには経験とスキルが必要になります。
客室の状態は、宿泊客の満足度を左右する大切なポイントです。たとえ床に落ちている髪の毛1本でも、ホテルそのものの印象を下げる原因になりかねません。ルーム・インスペクションは目立つ作業ではありませんが、ホテルの質を維持するためには必要不可欠だといえます。
帝国ホテル東京以外にも、ルーム・インスペクションに非常に力を入れているホテルがあります。
例えばある高級ホテルが快適な客室を提供するために行っているのが、細かい役割分担です。
このホテルではハウスキーピングを「清掃メイド」、「チェッカー」、「インスペクター」の3つの役割に分け、それぞれ客室の清掃、全室の仕上がり確認、そして宿泊客目線での作業の品質チェックを行います。
インスペクターが全室をチェックするのに対し、チェッカーはランダムに客室を回って確認します。チェッカーの仕事の最大の特徴は「実際に」宿泊客の視線になって客室を確認するということです。
例えば、浴室であればバスタブの中に座った状態でのチェックを行います。こうすることで、バスタブの上から確認しても分からなかった汚れにも気付くことができます。
そしてこのホテルのインスペクターは、全員チェッカーとして経験を積んできています。インスペクターになるまでは10年以上かかることが一般的で、ホテルのクオリティを守る最後の砦としての高いレベルの仕事を求められているということが分かります。
なおインスペクターの仕事には清掃メイドの教育も含まれており、清掃で不備があったときには本人にやり直しを促します。そうすることでスキルアップにつながり、繁忙期でもスムーズに客室を仕上げられるようになります。客室のチェックだけに留まらないインスペクターの存在が、客室の品質を維持しているといえるでしょう。
ターンダウンサービスとインスペクションはしっかりと押さえよう
ターンダウンサービスとルーム・インスペクションは、ホテルで客室清掃に携わるのであれば必ず知っておくべき用語だといえます。
インスペクションはどのホテルでも行われており、宿泊客からの評価に直結します。また、ターンダウンサービスは高級ホテルにおいては欠かせないサービスだといえるでしょう。
なお、ターンダウンサービスやインスペクションのやり方は各ホテルによって違いがあります。より効果を上げるために各ホテルが工夫しているという点も、併せて押さえておきましょう。