4月までに知っておきたい。ホテルの従業員、清掃スタッフの研修ポイント
2020.01.08
ホテル全コラム
ホテル経営・マネジメント
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4月は異動や入社などでスタッフが増える時期です。スタッフが増えた場合、その教育が課題となります。
ここでは4月を迎える前に、今のうちに押さえておきたい研修のポイントを紹介していきます。
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ホテルの研修
まずはホテルの従業員に対して教えるべきことをピックアップしていきます。
ホスピタリティについて
新しい従業員には、ホテル業を「ホスピタリティ産業」の1つであることを理解してもらう必要があります。
例えばホスピタリティ産業の概況や、「そもそもホスピタリティとは何か?」などを教えると良いでしょう。
ホテルスタッフの一員としての意識付け
ホテルの業務は1人でこなせるものではありません。周りのスタッフとチームになって協力することが大切です。
そのためには以下のことを教える必要があります。
・企業理念や事業方針
・ルールや規律
・報告、連絡、相談(ホウレンソウ)の徹底
ホテルによって違う部分もあるため、自分の勤務するホテルに必要なことをしっかりと教えてあげましょう。
基本的なマナー
多くの職場に共通するマナーですが、接客業のホテルには大切な部分です。
以下の項目について具体的に教えてあげてください。
・身だしなみ
・言葉遣い(挨拶や返事の仕方なども)
・立ち居振る舞い(お辞儀の作法なども)
シーン別のマナーや対応方法
業務で直面する具体的なシチュエーション別に、どのように振る舞ったら良いのかを教えてあげます。
以下のような部分を指導しましょう。
・笑顔(第一印象の重要性も教える)
・お客様のご案内方法
・物の取り扱い方
・電話応対
・名刺の取り扱い方
・席次に関する知識(上座や下座など)
・障害者や高齢者との接し方
仕事をする社会人として必要なこと
ホテルの仕事全般において気を配らなければならないことを教えます。
例えば以下のようなことが該当します。
・倫理観
・衛生に関する意識や知識
・個人情報の取り扱い
特に衛生に関する知識や意識が欠如していると、食中毒が発生する原因にもなり、ホテルにとっては大打撃です。
また、昨今は個人情報の管理や取り扱いに非常に厳しくなっており、その対応方法も年々変化しています。
そのため、時代に対応した正しい知識や情報の取り扱い方法を教える必要があります。
顧客満足度について
ホテルではお客様にリピートしていただくことが重要な課題の1つです。そのためには顧客満足度を向上させる方法や、そもそも顧客満足度とは何かということを知らなければなりません。
顧客満足度については、以下のことを教えてあげるといいでしょう。
・CS(Customer Satisfaction)の概要
・もう一度行きたいホテルについて
・満足方程式
満足方程式について少し補足をします。
お客様は「実際に感じたときの価値」が「事前の期待値」よりも高かったときに満足感を得るとされています。このため以下の式で満足度を表せるという説があります。
「顧客満足=お客様が実際に感じた価値-事前期待値」
どのようにすればお客様がお客様の事前期待値を上回ることができるのかを考えさせ、または教えてあげてください。
指導担当者に向けたOJT研修
OJTを行う場合は、指導を担当する社員に前もって新入社員の指導方法を教えておくといいでしょう。
指導役の社員はそもそも教育のプロではありません。OJT前に「新人を指導する方法」を覚えさせれば、より効果の高いOJTができる可能性がアップします。
清掃スタッフ(客室清掃員)の研修
続いては清掃スタッフにしておきたい研修の内容を紹介します。
使命(目的)
まずは清掃スタッフの使命や目的です。これは「4つのS」で教えるといいでしょう。
・整理:乱れた状態にある物を整えることや、不要な物を取り除くこと
・整頓:次の仕事のために、取り出しやすいように順序立てて並べること
・清掃:いわゆる掃除のこと
・清潔:整理と整頓と清掃の状態を維持すること
作業中の注意点
清掃作業時の注意点です。例えば以下のようなことを教えましょう。
・机にある書類や本は覗き見せず、触らない
・お客様の食べ物などには当然手を付けない
・ゴミかどうかわからない物はそのままにして、ゴミ箱の中にある物だけを処分する
・貴重品(お金など)が落ちていた場合、必ず作業の責任者に報告する
・お客様の通行を妨げないようにする
指示のポイントを把握する方法
客室清掃に際しては、上司や責任者などから何らかの指示を受けることもあるはずです。せっかく指示をもらっても要点を掴めないと意味がありません。
スタッフが的確に要点を掴んで仕事に移れるように、以下のような部分を指導しましょう
・わからない点は聞き返すこと
・指示を受けたら復唱、またはメモを取ること
・指示された仕事を終えたら報告や連絡をすること
具体的な客室清掃のやり方
客室清掃をしてもらう以上、客室の具体的な清掃方法を教え込まなければなりません。
ホテルによって差異はあるかも知れませんが、以下のような部分を教えてください。
・リネン類の交換
・ベッドメイク
・窓や鏡などのガラス拭き
・洗面台、浴槽やトイレの掃除
・壁や床の掃除
・アメニティのセッティング
・その他、用具の取り扱い方など
研修の事例
ここからは実際に行われた研修の事例をご紹介します。
グループ内に従業員を出向
同じコンセプトを持つ旅館同士で相互に従業員を出向させ、能力開発を行う試みが行われた事例があります。
この試みは、自分の職場では気づけないことに気づいたり、出向先で得た体験を共有したりすることで、生産性を向上させることを狙って行われました。
結果として、出向先と出向元において、お互いに仕事に関する意識が高まったそうです。また、出向が難しい管理職や経営者であっても、受け入れた出向者からは学ぶことが多かったとのことです。
ワークショップの実施
出向とまではいかなくとも、複数の宿泊施設の幹部層を集めたワークショップを開くことで、各参加者が持つ問題点の共有や課題解決方法を話し合った事例があります。
参加者からは「他の方の考え方や取り組みなど違う発想や視点が大変参考になった」「同じ意識を持った仲間と共に問題を共有でき、自社に生かしていけるように頑張る力となった」などの声が聞かれました。
写真中心のマニュアルの作成
それまでマニュアルがなく、従業員の判断で部屋のアメニティ類のセッティングを行っていた宿泊施設がありました。
そこで、業務の効率化を狙って写真をメインにしたマニュアルを作成したそうです。
ビジュアルで学べるためわかりやすく、教育に要する期間が約半分にまで短縮されました。また、従業員が写真通りにアメニティ類を並べるためサービスの質が均一になる効果も得られたとのことです。
動画マニュアルの整備
前述の写真マニュアルから一歩進めて、動画でわかるマニュアルを作成した事例があります。
その宿泊施設では紙ベースのマニュアルが存在していましたが、内容は一般的なものであり、その施設の実情には適していないものでした。
そのため指導役が新人について細かく教える必要があり、効率的とは言えない状態でした。
そこで動画マニュアルを作ったところ、指導する側とされる側双方の負担と拘束時間が大きく減ったそうです。
動画マニュアル導入前と比べて4分の1に教育機関が減ったケースもあり、新入社員の即戦力化に繋がったようです。動画マニュアルの作成と言うと難しいイメージがあるかも知れませんが、スマホで動画を作成することによって低コスト化を実現した例もあります。
新しい人が来る前に研修内容を考えておこう
新しく来た人をできるだけ早く即戦力にするためにも、指導や研修は大切です。
そのときになって慌てないように、早めに指導方法やマニュアルなどを整備することをおすすめします。