民泊施設とホテルの清掃の違いとは。仕事内容や業務量を徹底比較
2020.03.11
業界コラム
近年、東京や京都では、外国人観光客をターゲットにした民泊施設が増えています。
低価格で空き部屋を提供できる新たな産業として注目されている民泊ですが、近隣住人とのトラブルや違法な利用などのトラブルも発生しており、業界の大きな課題とされています。
そのような民泊施設に欠かせない清掃は、一般的なホテルとの違いはあるのでしょうか。今回は民泊施設とホテルの業務の違いや特徴を比較しました。
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民泊とホテルの違い
清掃の違いの前に、民泊施設とホテルの違いについて解説します。民泊とは「一般家庭に宿泊すること」とされており、日本においてはマンションやアパートのオーナーが主体となって、空室を観光客に貸し出すタイプの民泊が、東京、大阪、京都などの都市部の観光地を中心に普及し始めています。
以下の図で、それぞれの特徴を比較しましょう。
■民泊とホテルの違い
ホテル | 民泊 | |
---|---|---|
貸し出し | ・施設そのものが宿泊施設 | ・アパート、マンションの一室 |
宿泊価格 | ・中~高 | ・低 |
客層 | ・30代以上のビジネスマン | ・外国人観光客 |
・中高年層 | ・20代が中心 | |
セキュリティ | ・配慮されている | ・原則、自己責任 |
清掃 | ・外注、もしくは内製 | ・外注、もしくはオーナー自らが行う |
チェックイン・チェックアウト | ・規定あり | ・原則自由 |
自分が住んでいる部屋を不在時に貸し出す「シェアリングエコノミー」も若者を中心に流行しています。
ホテルの利用客は、30代以上のビジネスマンや中高年層が中心ですが、民泊は主に20代の海外観光客がターゲットです。
ホテルと比べると民泊施設は価格がリーズナブルであることも若者に人気な理由のひとつです。
また、ホテルのように宿泊カードを記入し、カギをもらう必要はなく、宿泊施設から出る度にフロントに鍵を預ける必要はありません。
ホテルに比べると、自由度が高いことが民泊の大きな特長といえるでしょう。
※関連記事:ホテルと旅館の違いは部屋の数と広さ!和室、洋室の定義と客室清掃の違いはわかりますか?
民泊施設の清掃業務の特徴と課題
先述のとおり、民泊とホテルなどの一般的な宿泊施設は、制度などにおいて大きな違いがあります。
また、それと同じように「清掃」という観点でも民泊とその他の宿泊施設では大きな違いがあります。
それぞれの特徴的な清掃内容について解説します。
民泊施設の清掃業務の特徴1:部屋の形状が統一されていない
民泊施設の多くは、マンションやアパートの一室を利用者に貸し出しています。マンションやアパートが異なれば、その物件の形も大きく異なります。
1日に別棟の民泊施設を5件掃除しなければならない場合、5通りの清掃方法やゴミ出しの場所などを把握しなければならないので、清掃の効率化や清掃スタッフの負担軽減を図りにくい環境になってしまいます。
負担が大きいのは管理者側も同様で、それぞれの物件ごとにマニュアルを作成したり、オーナーの要望に都度、応える必要があるので統一マニュアルを作りやすいホテルにはない労力が必要になります。
民泊施設の清掃業務の特徴2:宿泊者とのトラブル
民泊施設の利用者の多くは、外国人が占めています。日本独自の宿泊マナーや部屋の使い方に慣れていないため、清掃時に以下のようなトラブルが発生するリスクがあります。
■清掃スタッフと民泊利用者とのトラブル
・利用可能時間を過ぎても利用者が退去していない
・カギがポスト等に入っておらず、部屋に入れない
・民泊利用者と近隣住人のクレーム対応に追われる
もちろん、すべての民泊施設でトラブルが発生するわけではありません。
ただ、クレームやトラブルが発生したい際、まずは清掃スタッフが対応しなければならないこともあるのはあらかじめ把握しておいた方がよいでしょう。
また、一カ所の清掃が遅れると、他の物件の清掃スケジュールも遅延してしまう可能性があります。
民泊施設の清掃業務の特徴3:清掃業務のスケジュールが不定期
民泊施設の多くは、毎日、毎週、毎月など定期的に利用者を確保できているわけではありません。また、宿泊日数も不定期なため、清掃時間(=部屋の汚れの程度)と清掃スタッフの継続的な雇用が難しいという点もあります。
ホテルの清掃業務
民泊施設の清掃と特徴と課題を解説しました。これからさらに需要が伸びる可能性が高い民泊の清掃業務ですが、そのクオリティや効率を向上するためには既存のホテル清掃についても把握して、参考にする必要があるのでしょうはないでしょうか。次は一般の宿泊施設ならではの清掃におけるメリットについて紹介します。
ホテル清掃のポイント1:部屋の大まかな間取りが類似
ビジネスホテル、シティホテル、リゾートホテルなど、ホテルそのものや部屋のグレードによって客室清掃の内容やポイントは変わります。ただ、その同一のホテルやグレードの部屋は類似点が多いのでマニュアルを作成しやすく、清掃スタッフも清掃のコツを掴みやすいという民泊施設ではなかなか得られないメリットがあります。また、清掃する場所も「ベッドルーム」、「バスルーム」、「トイレ」の3カ所が多く、キッチンなどを掃除しなければならない民泊と比べると掃除場所が少ない傾向があります。
ホテル清掃のポイント2:トラブルに対してチームで対応できる
ホテルの清掃においても、民泊と同様、クレームやトラブルが発生することがあります。
ただ、ホテル清掃にはダブルチェックを行う「インスペクション」のほか、宿泊客が部屋にいるなどの際は清掃スタッフだけでなく、フロントなどと共同でスケジュール調整や宿泊客との対応を行えます。
ホテル清掃のポイント3:清掃場所が近く、効率化を実現しやすい
当たり前ですが、ホテルは同フロアや同一の棟をまとめて清掃できます。そのため、車で物件を回る民泊よりも効率的で清掃スタッフの負担を少なく業務を進めることが可能です。
例えば、「リネンワゴン」のような複数の部屋の回収したリネンを収納できる備品を導入するだけで、リネン室を往復する回数を減らし、効率化を図れます。
民泊をめぐる動向
ホテルと民泊の清掃の違いについて解説しました。東京オリンピックやインバウンド需要の増加で、民泊施設数も増え、それに伴って民泊清掃に参入する清掃事業者も現れています。
その一方で、コスト面や効率の改善を図れずに民泊清掃から撤退する業者も存在します。現在、法律などの環境整備が整いつつある民泊の動向について最後に紹介します。
整備されつつある民泊の環境
2018年6月に民泊新法が施行され、民泊における環境は大きく変化しました。「民泊事業の届け出をしないまま宿泊客を募る」、「消化器や非常灯などを設置していないにも関わらず届け出する」などの違法な施設は、新制度によって厳しく取り締まられることになり、大手民泊マッチングサイト「airbnb」の登録物件は、一時大幅に減少しました。
それでもなお、ホテルには見られないトラブルの要素を抱えているものの、民泊をめぐる環境は徐々に整いつつあるといえるでしょう。
清掃業界としても一大産業になるかもしれない民泊に注目しておいて損はないのではないでしょうか。
民泊とホテル清掃の違いに着目しよう
同じ客室清掃であっても民泊とホテルには大きな違いがあります。清掃スタッフ、管理者のどちらであっても宿泊業界において、市場拡大が期待されている民泊は無視できない存在です。
いざというときの機会を逃さないためにも、普段から民泊、ホテルに関する情報にアンテナを張っておきましょう。