清掃効率の向上に関わる。スタッフのモチベーションアップ方法
2020.04.22
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雇用形態が多様な清掃業界では、清掃スタッフのモチベーションコントロールは容易ではありません。清掃スタッフ個々人で仕事への向き合い方が異なるため、上司は臨機応変な対応で清掃スタッフのモチベーションを引き出す必要がありますし、清掃スタッフ自身も自らモチベーションを維持する努力が必要なのです。今回はモチベーション研究の結果や清掃業の現状を鑑みて、清掃スタッフのモチベーションを高める方法をご紹介します。4月入社の清掃スタッフや指導者の方々にも有用ですので、是非ご覧ください。
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「モチベーションコントロール」で清掃効率を高める
モチベーションコントロールとは、物事に取り組むときに自身の「やる気」を起こすテクニックです。これはあらゆる業界において必須のテクニックとされており、従業員のモチベーションコントロールが会社の利益を上げるためのキーポイントです。なぜならば、いくら業務内容が効率的でも、実行する当人のやる気がなければ良い成果は得られないからです。
それでは具体的にどのようにすればモチベーションコントロールが出来るのかというと、従業員がやりがいを持てる環境を整えることが大切です。その理由は、もともと人は自身の苦手なものや無関心で、そしてやりがいを感じないものに対して、やる気を失う性質を持つからです。会社はこのような状況を防ぎ、業務に没頭してもらえるように努力しなければいけません。
ここで清掃業におけるモチベーションコントロールを考えます。前提として清掃業は以下のような特徴を持っています。
1.黙々とした一人作業が多い
2.体力を消耗する
3.マニュアル通りの効率的な動きを求められる
4.正社員・アルバイト・パート・派遣など雇用形態が多用
ここからわかるように、清掃業務は一人で黙々と作業するための強い忍耐力が必要なため、モチベーションコントロールの重要性は高いといえるでしょう。また、公共の場での作業が多いので、マニュアルで定められた業務を迅速にこなすことが求められます。つまり、個人の役割が明確で細分化されている一方で、他の社員との交流が少なく、成長を感じにくいというデメリットがあるのです。
今回は以上のような事情を考慮し、清掃スタッフのモチベーションを向上させるべく、上司・管理者が清掃スタッフに対して行うべきことと清掃スタッフ自身が行うべきことをそれぞれまとめました。
上司、管理者が行うべきモチベーションコントロール
先述したように清掃業は「非正規社員が多い」「一人作業が多い」などの特徴があるので、上司はそれを考慮したモチベーションコントロールをする必要があります。
ここでは上司が清掃スタッフに対して「すべきこと」と「してはいけないこと」を解説します。基本的には外発的動機づけ(外部から刺激を与える方法)と、内発的動機づけ(清掃スタッフ自らの力でやる気を高めてもらう方法)の2種類のモチベーションコントロールからなります。
上司が部下にすべきこと
・正社員登用
経済省の労働調査(2015)によると、男性非正規社員の4分の1は正規社員の仕事がなかったという理由で非正規社員になっています。そのため一定の実績を積んだ清掃スタッフが正社員登用される仕組みがモチベーションになりえます。
・監視
定期的に上司がスタッフの仕事を観察します。
・自律感を与える
自分の意思ですすんで仕事をするという感覚を与えます。そのために、自分の仕事には社会的意義があるのだと認識させることが重要です。会社の経営理念やビジョンを定期的に共有しましょう。
・有能感を与える
清掃スタッフをほめることで、有能感を与えます。具体的にはメールや表彰を介して仕事のプロセスをほめることで、自身の仕事ぶりがつぶさに観察され、適切に評価されているのだと実感してもらいます。ほめる部分を具体的にしたり、早いタイミングでほめたり、感謝の気持ちを添えるとより効果的です。
・信頼関係をつくる
モチベーションのベースとして上司とスタッフの信頼関係がありますが、清掃業は非正規社員が多いので、上司とスタッフの間で上下関係ができてしまうことがあります。その関係を払拭すべく、上司の方から信頼・尊敬の念を示すことが重要です。
・適切に叱る
叱るなら間違いを起こしたタイミングですぐに叱る、自席でなく場所を変えて叱る、そして笑顔で締めくくる等の工夫でスタッフは気持ちを切り替えやすくなります。
・ライフプランシートを作成
スタッフに夢や目標を宣言させます。
・失敗から学ばせる
失敗したときは原因と再発防止をセットで考えさせます。
上司が部下にしてはいけないこと
・安易な給与減額
非正規社員の場合は仕事へのスタンスが様々なので、成果が低いときにも給与減額には慎重になった方が良いかもしれません。非正規社員の仕事への熱意に応じて任せる業務の責任の重さを変えるのも良いでしょう。
・過度なサポート
スタッフの自己成長を妨げるので注意しましょう。スタッフは自分の成長を感じるとやる気が出ます。
・拘束時間の延長
非正規社員は自由な勤務時間を求めて働いている場合が多いので、拘束時間に注意しましょう。
・間違った叱り方
メールで叱る、感情的になる、人格の否定などはモチベーションを下げます。
清掃スタッフ 自身で行うモチベーションコントロール
モチベーションは上司や管理者だけでなく、清掃員自らも管理しなければ十分な効果は得られません。
清掃員自身で行えるモチベーションコントロール術を3つ紹介するので、ぜひ教えてあげてください。
・具体的な目標を設定
目標が具体的であるほど責任感が生まれ、モチベーションが高まります。例えば清掃に関する知識を身に着けて「今まで落とせなかった汚れを落とす」など自分の中で目標を立てるのが良いでしょう。
・成果を上げている人の真似
清掃業で成果を上げる人は清掃現場の利用者のことを深く思いやっています。「全国ビルクリーニング技能競技会」という清掃技能を競うコンテストの優勝者いわく、ただ単に汚れを落とすだけでなく利用者が使いやすい場所を提供することを心がけるのが大切なのだそうです。
・資格を取得
清掃業は単純作業を繰り返すための粘り強さが必要とされる一方で、一度業務を覚えてしまうと成長実感が失われます。そのようなときは清掃スキルを証明する資格の勉強をして、キャリアアップを目指しましょう。仕事の幅が増えるだけでなく給与を上げることにも繋がります。
プライベートで使えるモチベーションコントロール
・旅行
エラスム&アイダホ大学の研究によると、旅行はモチベーションを上げる効果があります。旅行で新しいものに触れると脳が刺激されて幸福感がアップするからです。
・ウォーキング
イリノイ大学の研究では20分ほどのウォーキングで幸福感が上昇することが報告されています。清掃作業の前後どちらかに行うだけでも一定の効果が期待できます。
・アファーメーション
肯定的な発言をすることで自分自身を洗脳する方法です。例えば鏡の前で「自分は幸せだ」などと言い聞かせることでポジティブな思考回路になります。仕事前のルーティーンとして取り入れるのも良いかもしれません。
・ポジティブ発言
いわゆる「言霊」です。自分の発言はモチベーションに影響するので、仕事中はもちろんプライベートでも前向きな発言を心掛けましょう。
清掃業にはチームワークが不可欠
清掃業は個人業務がメインではありますが、その分意識的に清掃スタッフのモチベーションを上げる工夫が重要です。また、モチベーションの上げ方についても清掃スタッフ自身の努力と上司からの働きかけの両方が必要ですので、最終的には良質なチームワークが試されます。パフォーマンスアップを図る際は、チーム全体でモチベーションコントロールに目を向けてみてください。