感染症の流行で品薄に・・・。アルコール消毒液の効果と成分とは
2020.05.28
道具の使い方
ウイルス対策に大きく貢献するのがアルコール消毒液です。手指の衛生管理から室内環境の消毒まで幅広い用途があります。特に今年は新型コロナウイルスの流行により、アルコールの供給が需要に追い付かない事態となってしまっています。。
一刻も早くアルコールの供給体制を整えることが基本ですが、次に大事なのが「アルコールの使い方」です。適切で効果的な使い方をすることで感染症をより予防でき、品薄が続くアルコール消毒液の使用量を抑えることもできます。そこで今回はアルコール消毒液の概要、使い方を紹介し、更に使用量を抑えるための代用品についても解説します。
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アルコール消毒液とは
アルコール消毒液は手指、遊具、室内環境、家具などを消毒するために使用します。MRSA等の一般細菌、結核菌、真菌、HIVを含むウイルスを除去するのに有効です。手洗い後に、アルコールを含ませた脱脂綿やウェットティッシュで消毒したい箇所を拭き、自然乾燥させましょう。手指の消毒についても同様で、手の平・手の甲・指の間・親指・手首に自然乾燥するまでしっかりとすり込みます。
一方で糞便や嘔吐物、血液などを掃除する際には、アルコール消毒薬でなく次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒薬)の使用が推奨されているので、適切に使い分けましょう。
なお、アルコール消毒液使用時には以下の点に注意してください。
1.刺激性があるので傷や手荒れのある手指には使用しない
2.引火性があるので台所など火元での使用には特に注意
3.ゴム製品、合成樹脂などは変質するのでアルコールに長時間浸さないようにする
以上のことを念頭に適切なアルコール消毒を行いましょう。
手指消毒に使われる消毒液の代表例
手指消毒には「中水準消毒薬」と呼ばれる消毒液を使用します。この種類の消毒液は病原性微生物である「細菌」「真菌」「ウイルス」の殺菌に適しており、手指消毒に有効です。ここでは手指消毒に用いられる代表的な消毒液を紹介します。
■手指消毒に適した消毒液
・イソプロパノール/エタノール:強力な殺菌力を持つが、人体への刺激が強い
・イソプロパノール+エタノール:エタノール等よりも安価
基本的に上記の消毒液が有効とされますが、いずれにしても過度な使用等には注意し、商品ごとの用法・容量を守って使用してください。
アルコール消毒液が有効な病原体
エタノールやイソプロパノールを含むアルコール消毒液は、細菌・真菌・ウイルスに有効とされています。例えば速乾性手指消毒薬と言われるスプレータイプのアルコール消毒薬などは手軽に手指の消毒ができることもあり、感染症予防に有用です。また、スプレータイプに限らず、先述したように遊具、家具、室内環境の殺菌にも優れています。
しかしながら、アルコール耐性が強くアルコール消毒液が効きづらいウイルスも存在します。具体的には食中毒の主要な原因と言われるノロウイルスなどです。
ノロウイルスに対するアルコール消毒液の殺菌効果の有無・程度ついては、様々な意見があり一概に断定はできませんが、一定の効果は期待して良さそうです。その理由はヒトのノロウイルスに構造が類似したウイルス(ネコカリシウイルスやマウスノロウイルスなど)に関する研究において、消毒効果が報告されているからです。
ただし、上述のネコカリシウイルスの研究ではアルコールに30秒以上の接触が必要であるなど、アルコール耐性が強いのは事実なので、十分量の消毒液と清掃時間は確保しましょう。
アルコール消毒液で手を消毒する方法
1.スプレータイプのアルコール消毒液を、適量手に取る。
2.手の平どうしを擦り合わせる。
3.指先や指の背、手の甲をもう片方の手の平で擦る。
4.指を組み、指の間を擦る。
5.親指をもう片方の手で握り、ぐりぐりとねじるように擦る。
6.両手首を擦る。
7.アルコール消毒液が蒸発するまで全体をまんべんなく擦る。
以上の手順に従って、アルコール消毒液を刷り込んでいきましょう。石けんと流水での手洗い後に消毒することでより効果を発揮します。自宅では洗面台に設置しておくと便利でしょう。
ただしアルコールの刺激に対して過敏な人や手に傷がある人は注意が必要です。その理由はアルコールには刺激性があるからです。もしこのような人がどうしてもアルコール消毒液を使いたい場合は、「ヒビソフト」が比較的刺激が少ないと言われています。
最後にアルコール消毒液の補充に関しては、消毒液自体に抗菌作用があるので、同じ容器に注ぎ足して問題ありません。ただし使用する容器は定期的に洗浄・乾燥を行ってください。
厚生労働省も認めた、アルコール消毒液の代用品
感染症の流行時にはアルコール消毒液の需要が高まります。それに伴い供給不足が発生すると、医療機関や高齢者施設だけでなく一般家庭でも確保が容易でなくなります。手指の衛生管理はもちろん生活環境の消毒ができないと感染症の拡大を防ぐことはできません。
このような事態に対応するため、今年の3月には厚生労働省がアルコール濃度が高い酒(70%~83%)を消毒液の代用品として認めることを医療機関に通知しました。これを受けて福井県の自治体では全国で初めて地元の酒造メーカーに消毒用のアルコール生産を依頼しています。
ここでは酒の他に厚生労働省から推奨されている身近な代用品について紹介します。
・熱水
食器類は80℃の熱水に10分間つけると消毒できます。
・石けんとハンドソープ
厚生労働省と経済産業省の資料によると、手指のウイルス除去には丁寧な手洗いだけでも十分とされています。具体的には石けんやハンドソープで10秒間揉み洗いし、15秒間流水ですすぐことを2回繰り返すと、残存ウイルスを約0.0001%にまで減らすことができると言われています。
・塩素系漂白剤
濃度0.05%に薄めることで消毒薬として使用できます。例えば「花王」のハイター、キッチンハイター、「カネヨ石鹸」のカネヨブリーチ、「ミツエイ」のブリーチ、キッチンブリーチなどを適切に希釈すると消毒薬として代用可能です。商品パッケージやメーカーHPに作り方や使用方法が記載されているので、確認してから使用してください。なお、冒頭で述べた通り、塩素系漂白剤はアルコール類と違い、人体に有害で手指の消毒などには使用はできないので取り扱いにはご注意ください。使用できるのは手すり、ドアノブ、トイレの便座などの室内環境です。
以上のように身近な代用品でウイルスの除去、あるいは殺菌が可能です。アルコール消毒液は汎用性が高く便利ですが、品薄の際はできるだけ節約し、これらの代用品も活用するのが良いでしょう。
効果抜群アルコール消毒液。適切な使い方で節約を
室内環境から手指の消毒まで、アルコール消毒液の効果は広範囲にわたります。細菌・真菌・ウイルスに有効なので感染症対策において非常に重要です。そのため、有事の際には医療機関から一般家庭で必需品と言えるかもしれません。
一方で供給不足に陥った場合には個々人が正しく大切に使わなければいけません。時間があるときにはアルコール消毒液を使わず石鹸での手洗いに留めたり、室内環境には塩素系消毒薬などの代用品を用いましょう。アルコール消毒液を適切に使うことで感染症予防につながります。