5Gで変わる業態と働き方。ホテル・清掃業界の未来と変化
2020.10.02
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近年テレビや新聞などのメディアで、「5G」という用語が頻繁に登場するようになりました。最先端の通信システムで、生活を劇的に変化させる技術だと言われています。しかし、「スマートフォン等が便利になる」といった抽象的なイメージはできても、5Gの明確な定義が分からない人もいるのではないでしょうか。そこで今回は5Gについて大まかな概要とホテル・清掃業界における具体的な5Gの活用事例を解説します。
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生活が大きく変わるかも。5Gとは
5Gは「第5世代移動通信システム」という最先端の通信システムを表す言葉です。具体的に従来の通信システムから進化した点および特徴としては、「高速・大容量」「低遅延」「多数接続」の3つです。以下、順に解説します。
1.高速・大容量
いままでにないスピードで大容量のデータを処理します。この特徴によって、VR(Virtual Reality:仮想現実)など、仮想世界を取り扱う技術をより精巧なものに昇華させます。例えば、仕事で遠隔地の社員同士が会議をする場合、3D映像を用いることで対面会議と同じ感覚を得られるのです。3D映像には動き・音声・表情の情報を相手方に送信する必要があるので、5Gによる恩恵は大きいでしょう。
2.低遅延
従来よりもタイムラグが小さくなります。身近な例としてはオンライン対戦ゲームでの遅延が減り、快適なプレイが可能になります。また車の運転について、車内に精度の高い仮想3Dアバターの友人を同乗させることも可能です。友人の動きをリアルタイムで投影し、逆に車内映像を友人に送れます。まるで友人とドライブをしているかのようにコンタクトできるのです。
3.多数接続
様々なデバイスが同時にネットワークに繋がります。スマートフォンだけでなくデジタル家電、白物家電、センサー類も含まれるので、空調やカーテンの開け閉めが自動化されるなど、より快適な生活が送れるようになります。また、この特徴をインフラに適用することでスマートシティ化を進めることが可能です。
5Gで変わるホテル・宿泊業界の影響
日常生活を激変させる可能性を持つ5Gは、ホテル・宿泊業界にも大きな影響を及ぼします。前提として厚生労働省が作成した「衛生行政報告例」によると、インバウンド需要の増加に伴い、2013年からの5年間でホテル・簡易宿所の数は増加しています。それにも関わらず、ホテル・宿泊業界の人手不足が問題となっているのです。
そのため、今後は業務効率化とサービス向上を両立することが必須要件であり、それを実現するのが5Gとされているのです。
移動式ホテルの登場
オーストラリアでは5Gを搭載したコンテナ型ホテルとして、世界初となる「移動式5Gホテル」が作られました。これは期間限定の試みではありますが、低コスト・豪華設備を提供し、なおかつホテルごと移動できるという画期的なホテルです。旅行好きのあらゆるニーズに応えるとされており、以下のようなサービスが提供可能です。
・スマートミラー
多機能のルームミラーです。ニュースや新聞の確認や映画鑑賞も可能です。
・音声操作
照明の調節、Youtube Musicの再生などは声に出すだけで実行できます。質問すればGoogleから適切な回答が返ってきます。
・AR(拡張現実)体験
洋服ダンスの一部にAR機能があります。ハンガーについている写真をスマートフォンで読み込むと、その洋服を着たモデルが動く姿を確認できます。
・コンテンツの高速ダウンロード
コンテンツのダウンロード、ストリーミングが高速です。例えばビデオオンデマンドをストレスなく利用可能で、大画面テレビで楽しめます。
ホテルの人手不足にはIoT技術で対応
先述したようにホテル・宿泊業界は人手不足です。そのため、少ないマンパワーで顧客満足度を上げる必要があり、解決策としてIoT技術が注目されています。IoTとはパソコンやスマホ以外に、家電やセンサーなどの「モノ」がネットに繋がることです。今後は5Gを介して、IoT機器をネットに繋ぐケースが増えるとされるので、IoT化されたホテルがスタンダードになる時代も遠くないかもしれません。
実際に東京都台東区の某ホテルでは設備のIoT化に着手し、スタッフが1~2名で対応できるシステムを構築しました。このホテルの特徴は、客にホテル専用のスマホが配布されることです。スマホはルームキー代わり使用できるほか、「おはよう」「おやすみ」などのモードをタップすると、カーテンの開け閉め、ライトの光度、テレビのオン・オフ、エアコンの風量などが自動的に調節されます。
他にも業界内で顔認証のみの「キーレスホテル」が検討されるなど、IoTによる利便性向上には様々な可能性があります。
5Gで変わる清掃業界の働き方
5Gは清掃業界の働き方を変えるかもしれません。その理由は清掃業界もホテル業界と同様に人手不足が深刻であり、対抗策として5Gを活用した清掃業務が注目を集めているからです。ここでは予想される清掃業界の未来と、実際に行われた5Gによるビルメンテナンス業務の実証実験について解説します。
街全体が自動清掃化に
未来の街ではお掃除ロボットが24時間稼働し、街は綺麗な状態を維持できるようになると期待されています。その根拠は、5Gが都市インフラに活用されることで、お掃除ロボットを安全・円滑に運用できるようになるからです。例えばある企業は街路灯にカメラ・スピーカーなどのデバイスを装備させた「スマート街路灯」なるものを開発しています。
これが実現された場合、管制センターで街中をくまなく監視することができます。仮にお掃除ロボットのトラブルなどが生じた際にも迅速な発見が可能で、遠隔操作で対応することも可能です。これも5Gの特徴である低遅延(リアルタイム)がなせる業と言えるでしょう。
中国で既に5Gを活用した「清掃ロボット部隊」が編制されており、自立走行するロボット同士が情報を連携させ、共同作業を行っているそうです。日本でも近い未来に街全体が自動清掃化され、社会全体の価値観が大きく変わるかもしれません。
ビルメンテナンス清掃はロボットが担う
ビルメンテナンス業務は人手不足が深刻です。そのためAIやIoTなどの最新技術を活用したサービスが増えています。具体的にはエレベーターなどの保守・点検業務はこれらの技術で効率化されてきました。今後は5Gの導入によって清掃を含むその他の業務の効率化が期待されます。実際にビル清掃現場への5GやIT技術導入の動きはあり、実証実験も行われています。大分県産業科学技術センターの実験では、ロボットによるトイレ清掃業務を実施しました。概要は以下の通りです。
1.オペレーターが遠隔でアバターロボットを操作
2.アバターロボットが遠隔操作データを蓄積・学習
3.遠隔操作モードとAI自動操作モードを兼ね備えたロボットになる
ロボットが担える業務を増えると、限られた人材を有効活用できるようになります。また、別の実証実験では「5G」「ドローン」「AR」を組み合わせたビルメンテナンスが実施されました。こちらは清掃に限らず高所での作業を想定したものですが、いずれにしても清掃業界とITは密接な関係を持ちます。5Gが清掃業界に及ぼす影響は大きいでしょう。
5Gはホテル・清掃業界の働き方を変革する
最先端の通信システムである5Gは、人々の生活を便利にします。家電の自動化やゲーム業界の発展、3Dアバターによるドライブの娯楽化など、あらゆる面で生活スタイルが変わることでしょう。同様に、ホテル・清掃業界の働き方を大幅に変える可能性を秘めています。働き方改革やそれに伴う人手不足により業務効率化が求められる昨今、ホテル・清掃業界と5Gの結びつきは欠かせません。5Gによる働き方の変革が眼前に迫っています。