クリーンネス(清潔度)など。コロナ対策にもつながるホテル清掃で注視すべき指標と対策
2021.01.06
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チェックアウトの度に枕を捨て、新品に交換するホテルをご存知でしょうか。これは極端な例ですが、コロナ蔓延以降の客室清掃では「清潔さ」が重要視されています。しかし、コロナを抑え込むための具体的な手順は分からないかもしれません。
そこで本記事では、コロナに対抗しうる客室清掃の方法や注視すべき指標を解説します。加えて、感染症対策専門家の提言に沿った宿泊業界の公式清掃ガイドラインも合わせて紹介いたします。
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コロナの影響で問われるホテル・客室清掃の品質
新型コロナウイルスはホテル経営、および宿泊業界に多大な影響を与えました。ネガティブな側面として業界全体の売り上げが大幅に減少したことが挙げられます。日本政策金融公庫の調査では、コロナウイルスの蔓延が原因で、ホテル・旅館業の半数以上が「売り上げ80%減」と深刻な打撃を受けていることが明らかになりました。
これは2020年6月時点の調査ですが、いまだに(12月現在)Go To措置が安定しないなど、厳しい状況が続いています。しかし、コロナ禍の副産物としてホテル清掃の革新が起ころうとしています。
ホテル・客室清掃の品質が重要視
コロナショック以降、ホテル利用に関する消費者の意識は変化しました。消費者の意識調査では、サービスや立地、快適性よりもコロナ対策を重視するという声が大部分を占めるようになったようです。
元々コロナ以前から、客室の清掃基準が低いとお客様にリピートされないという報告があるので、今後は更にその傾向が強まるかもしれません。また、意識の高まりは経営側にも波及しており、消毒、3密回避、換気、清掃スタッフのマスク・手袋の着用などは半ば常識となりました。
加えて、営業自粛の解除後は、このような感染症への対応を発信することで、宿泊施設に対する信頼感を高める動きがあります。
※出典:株式会社日本政策金融公庫「PowerPointプレゼンテーション」
クリーンネス(清潔度)など。客室清掃の指標とは
クリーンネスとは清掃関連の指標の1つであり、習慣的に清潔な状態、綺麗な衛生状態を保っておくことです。類義語に「クレンリネス」がりますが、こちらは清潔な状態にするための行為そのものを指します。いずれも客室清掃だけでなく、他業界(飲食店など)においても用いられています。
そして昨今はコロナの影響もあり、クリーンネスの基準が国内外で厳格化してきています。例えば感染者の多いアメリカでは大手ホテルがアメリカ国内トップクラスの医療機関から直接指導を受けたり、提携する等してクリーンネスを高めています。具体的には共用エリアで人の手に触れるものを頻繁に清掃したり、ロビーにある不要な家具は撤去、あるいは配置を変えて感染予防対策を講じるようになりました。また、ホテルによってはプールサイドの椅子を撤去したり、施設内ジムをプライベートに利用できるように工夫しているようです。
その他の清掃関連指標
清掃関連の指標はクリーンネスの他にもいくつかあります。例えば医療業界では汚れ具合を専用の機械で数値化し、科学的に清潔さを測定しています。ここでは医療業界を含めた他業界で良く用いられる指標についても触れていきます。
・ATP
ATPはコロナ感染対策の徹底度の指標として利用することができます。そもそもATPとは生物が活動するためのエネルギー源で、人間はもちろん微生物の体内にも含まれています。現在ではATPを検出するキットが開発されているので、これを利用して物質表面に微生物、病原菌などが付着しているかどうかを調べることができます。利用シーンは食品工場、医療関連施設、居酒屋・ファミリーレストラン、ホテルなどと幅広く活用できます。
・床面の光沢度
光沢度(光の反射レベル)を計測することで床、フロアの仕上がり具合を把握できます。公益社団法人全国ビルメンテナンス協会に加盟している某企業も品質チェックに活用している指標です。自社内で「光沢度80以上で合格」などと最低ラインを決めておくことで、サービスの質を安定させたり、適切な清掃頻度を判断することができます。
・目視
数値化できない部分は目視で確認するしかありません。現在は清掃スタッフの人手不足が顕在化していますが、その中でもホコリが落ちていないか確認したり、水回りのカビの発生の有無、エアコンが清潔に保たれているかなど、人の目で確認する必要はあるでしょう。
客室清掃のクオリティ向上に関わる掃除のポイント
それでは具体的な客室清掃の方法を解説します。なお、本ガイドラインは専門家の知見や宿泊客、事業者側の受け入れ環境に応じて、適宜、見直される方針なので、常に最新版を参考にされることをおすすめします。ここでは2020年12月現在の最新版である第1版(2020年5月14日作成)の中で、客室清掃と特に関連性が強い部分をピックアップして紹介します。
■従業員自身の感染対策
・毎日の体温測定と健康状態を確認
・客室内には宿泊客だけでなく、従業員も使えるようにアルコール消毒液を設置
・清掃時、マスクと使い捨て手袋の着用を徹底
■ベッドルームの清掃
・回収後のリネン類は密閉して保管
・スリッパ等は洗濯・消毒 ※スリッパは使い捨てにすることも検討
・回収した使用済みタオルは密閉保管し、その後、洗濯・消毒
・集めたゴミはビニール袋で密閉
■バスルーム(トイレを含む)の清掃
・ドライヤー等の清拭消毒
・清掃時は十分に換気をする
・手が良く触れる場所は、清拭消毒
■備品の交換
・コップ類は消毒済みのものと交換
・座布団、座椅子等は消毒
■その他の場所の清掃
・出入り口やバスルームのドアノブは清拭消毒する
・リモコン、金庫、スイッチ類、テーブル、押し入れ、電話、冷蔵庫などは洗浄剤や漂白剤などを使用して清拭
ガイドラインの内容は以上ですが、最後に「寝具の除菌、清掃」に関して注目されている試みを紹介します。一般的に布団やマットレスの清掃や除菌は難しいとされ、シーツを交換するに留まります。これを改善すべく、大分県で寝具クリーニングサービスを提供している某企業では、加熱、振動吸引、150度~200度の赤外線照射などの方法でダニや菌を熱処理しているのです。
コロナウイルスは熱に弱いという報告があるので本サービスは更に注目度が高まっているようです。これは徹底した感染対策の一例なのでそのまま真似ることは難しいかもしれませんが、最低限ガイドラインの内容は遵守したほうが良いでしょう。
ガイドライン通りの清掃でホテル・客室のクリーンネス向上!
新型コロナウイルスの影響によってホテル・宿泊業界には、より一層の清潔度が求められるようになりました。そのため、ホテル・客室清掃の品質を高めるため、清掃関連指標を活用するのも良いでしょう。
また、具体的な清掃方法を検討する際は、本記事でも引用したガイドラインをご覧ください。未知のウイルスを相手どった戦いなので、感染対策のレベルをどこまで上げれば良いのか判断が難しいところですが、従業員、お客様の安全のため出来る限りの体制を整えましょう。