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コロナなどの院内感染対策「ゾーニング」の意味とは。病院・医療現場に求められる理由と実施例
2021.05.26 業界コラム

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新型コロナウイルス第3波が到来した2020年11月以降、東京都では10人以上のクラスターが33の病院で発生し、1500人以上が感染しました。この状況に対抗するため現在「ゾーニング」による院内感染対策が注目されています。しかし、院内でいかに活用されているのか実態は分からないかもしれません。そこで本記事ではゾーニングの意味や院内での具体的な活用方法について、国立国際医療研究センター等の情報をもとに解説します。

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コロナ禍の病院で「ゾーニング」が注目される理由

ゾーニングとはある空間を用途に応じて分けることです。例えば建築業界で家の間取りを決めるときにも活用されるなど、様々な業界に浸透しています。
こと医療業界においては、患者の過ごす空間を汚染区域、その他の場所を清潔区域と定義して、院内感染を防ぐ目的で活用されています。そして昨今ではこのゾーニングの需要が更に高まってきています。以下ではゾーニングに焦点が当てられることになった、ある院内感染の事例を紹介します。

不十分なゾーニングで医師や看護師ら36人が感染した事例

2020年の4月に、兵庫県の病院で医師や看護師、入院患者、清掃員ら36人を巻き込んだクラスターが発生しました。この件について、8月に調査報告書が公表されましたが、院内感染の大きな原因の1つとしてゾーニングの問題が挙げられたのです。具体的にはコロナ患者に対応した看護師が他の疾患で入院している患者の病室にも出入りするなどして、急速に院内感染が広がったとされています。
クラスター発生以降は多くの職員が自宅待機となり、約2か月間は救急外来の停止をせざるを得ませんでした。その後は以下のような対応で徹底したゾーニングを図っています。

・感染の疑いのある患者は個室で隔離
・コロナ患者に接触する看護師を完全に分ける
・レッドゾーン(汚染区域)にいる看護師とのやり取りは窓越しにする
・患者の表情や瞳孔を遠隔で確認するためのカメラを設置して、ナースステーションからレッドゾーンの中にいる職員に情報伝達できるようにした

病院・医療現場の「ゾーニング」のポイント

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国立国際医療研究センター・国際感染症センターの資料では、清潔区域と汚染区域をいかに配置すべきか解説されています。ここでは本資料を参考にして、医療機関での配置例やその他ゾーニングのポイント・注意点を紹介します。

ゾーニングの配置パターン

コロナ患者の病室を「汚染区域」、病室外を「清潔区域」として区分けするのは大前提です。特にナースステーションは原則清潔区域にしなければなりません。ただでさえ、医療従事者の心身への負担が増している中、感染リスクを高めてはならないからです。また、医療従事者が汚染区域に立ち入る際には防護具の着用を必須とします。これらを念頭に入れた上で、ケースバイケースでゾーニングしていきます。

■例1:基本パターン
・防護服の着用場所は廊下などの清潔区域とする
・脱衣場所は病室内(汚染区域)の扉近くとする
・感染者は原則、病室内でのみ生活する
・感染者が検査などでやむを得ず病室外に出る場合は、感染者専用のルートを確保、あるいは使用時間を制限して移動させ、汚染拡大を防止

■例2:病棟の一部を汚染区域にするパターン
(※人手や防護具の不足時)
・汚染区域は病室だけでなく、病室前の廊下まで広げる
・汚染区域の廊下と清潔区域の廊下の境目にはパーテーション(衝立)を設置
・ナースステーション(清潔区域)であらかじめ防護具を着用し、汚染区域に向かう
・それぞれのコロナ患者の病室で対応する毎に防護具を交換するのがベストだが、防護具の不足を踏まえ、そのまま他の病室でも着用することを容認
・脱衣場所は廊下の清潔区域への出口のそばに設定し、ここで脱衣してから清潔区域に戻る

■例3:病棟の大部分を汚染区域にするパターン
(感染者が多い、病室内にトイレがない、防護具が不足している場合)
・ナースステーション、廊下の一部、職員休憩室、器材室(防護具などを収納する部屋)だけが清潔区域
・廊下の大部分と病室、患者用トイレなどを汚染区域に設定
・防護具の着用は廊下の清潔区域内で行う
・脱衣場所は汚染区域の一角(清潔区域との境目の傍)に設定

ゾーニング設定時のポイント

ここまではゾーニングの核となる部分を説明しました。ここからはゾーニング設定時に考慮すべきその他のポイントをまとめます。なお、ニュース等でイエローゾーンまたはグレーゾーンと呼ばれる「準清潔区域」という概念が紹介されることがありますが、少なくとも国立国際医療研究センター・国際感染症センターの資料では設置が積極的には推奨されていません。感染対策が破綻するきっかけにもなりえるということで、ここでは割愛します。

■その他のポイント
・各ゾーンでやるべきことを明確にするために掲示物に示す(例:防護具を着用してください)
・清潔区域内でマスクを外す際、汚染区域から流れる空気で感染する恐れがあるので、外す場所には十分注意する
・ゾーンの境目は先述した衝立だけでなく、テープを用いても良い
・使用予定のないベッド、医薬品などは汚染区域外に出しておく
・汚染区域から廃棄物を搬出する際は、清潔区域を通過するときに汚染する危険性があるので、ビニールでの密閉、あるいは事前に汚染区域内で消毒してからにする

※出典:国際感染症センター「急性期病院における新型コロナウイルス感染症アウトブレイクでのゾーニングの考え方

ゾーニングに役立つ備品・機器

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ゾーニングの本質は「空間を目的に沿って明確に分ける」ことにあるので、これを実現する商品が必要です。病院の場合は清潔区域と汚染区域を分けられるものを用意しなければなりません。ここではゾーニングに役立つ備品・機器を紹介します。

ゾーニング用テントシステム

2020年9月、東京と大阪に本社を置くテントメーカーがゾーニング用のテントシステムを発売しました。まずテントの出入り口にはゲートがあり、ゲートをくぐると次に筒状のテントが設置されており、その中を人が通るという構造になっています。このテントシステムは汚染区域に出入りする医療従事者の意見をもとにして開発されているので、効果的なゾーニングを可能にする商品だとされています。具体的には以下のような特長を持っています。

1. ゾーニングの範囲がわかりやすい
本システムは入口にゲートが設置されています。そのため清潔区域と汚染区域の境目を明確に認知することができます。

2.動線を目に見える形にしている
テントの内部には膜で仕切られた通路があります。これにより強制的に一方通行になるので、往来時に生じがちな予期せぬ接触感染の可能性が少なくなります。

パーテーション&掲示板(テラモト)

本記事でクラスターの事例として紹介した兵庫県の病院では、現在、徹底したゾーニングを実施しています。本病院へのインタビュー記事では施設内の様子が画像や動画で掲載されていますが、以下のような工夫が見受けられます。

■ゾーンを示す掲示物を設置
「ここはグリーンゾーン(清潔区域)」「ここはレッドゾーン(汚染区域)。カーテンに触れないように注意してください」といった具合に、ゾーンの境目に注意喚起とすべき行動を示した掲示物があります。
ちなみにテラモトでは掲示物を差し込める「パネルホルダー」や、動線をコントロールするための「ベルトパーテーション」を販売していますので、必要に応じてご活用ください。

※関連ページ
・テラモト「ベルトパーテーションスタンドD ステン ベルト赤

院内感染防止に貢献する「ゾーニング」

新型コロナウイルスの院内感染対策として、ゾーニングは効果的な手段だとされています。清潔区域と汚染区域を分けることで、患者はもちろん医療従事者の感染リスクを減らすことが可能です。
過去に不十分なゾーニング等が原因でクラスターが発生した病院でも、現在はコロナ患者に対応する看護師を分けたり、カメラを利用した遠隔指示を活用しています。
ゾーニングのレベルは病院の規模に依存するかもしれませんが、今後も重要な概念であることは間違いなさそうです。

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