『視線誘導』――視線の法則を知って、サイン看板をより活かせるヒントを見つけよう
2021.11.24
業界コラム
オフィスビル、居住用マンション、店舗。街なかにはいろいろなサイン看板があります。
テナントやお店の名前・メニュー・営業時間などのお知らせ。
さまざまな内容やデザインで、“伝えたいこと”を掲示するのが看板設置の目的です。
そしてもう一つ、サイン看板の重要な役割としてあるのが“こうしてほしい”を伝えること。
おもに『禁止(駐車・駐輪など)』『規制(立ち入りなど)』『誘導(場所の案内)』といった内容の掲示しています。
このような注意を促すサイン看板は、シンプル・わかりやすさをメインにしていることが多く、他のデザイン的な看板に比べてなかなか効果を発揮できない場合も――。
どうすればもっと効果的に“こうしてほしい”が伝わるのか、そのヒントを探ってみましょう。
どうして効果がない? サイン看板、置いてはみたけれど……
ここではサイン看板に関する「よくあるお悩み」として、ひとつ例をピックアップしてみました。
【駐輪所があるのに、違う場所に止められてしまう】
マンションや複数のオフィスなどが入ったビル。
自転車を利用している人も多く、ビル内には利用者専用の駐輪場が備えつけられています。
しかし、駐輪場がビルの裏側や地下など目立ちにくい場所にあるため、止めやすい道路沿いに駐輪する人が。
1台止められていると、「ここに止めてもいいのかな」と何台も無断駐輪が続いてしまうことも。
こんな時は【駐輪禁止】【案内図】のサイン看板が役立ちます。
でも、せっかくサインを置いたのに効果がなかなか出ない……よくある話ですね。
“どんなデザインのもの”を“どんなふうに置くか”――そのポイントを知るのが、サイン看板をより効果的に活かすことができるのです。
そのために知っておきたいポイントの基礎となるのが、『視線誘導』です。
視線誘導とは?
『視線誘導』とは、ユーザーの視線の流れをコントロールして、情報を正しい順番でストレスなく伝えるための方法です。
その目的は大きく分けて2つ
- ユーザーの“知りたい情報”へストレスなく視線を向けさせる
- ユーザーに“伝えたい・こうしてほしいという情報”を認知させる
『視線誘導』は、絵画、広告ポスター、漫画やアニメの構図、ゲームやWebサイト、最近ではスマホアプリのUI(ユーザーインターフェース)デザインなどに多く取り込まれています。
他にも公共施設や交通機関、デパートやショッピングモールなどで――例えばトイレに行きたいと思ったときに顔をあげれば、案内図が見つかったという経験がある方は多いことでしょう。
このように日常のなかで「パッと見て知りたい情報がよくわかる瞬間」があったなら、そこには『視線誘導』が活かされているはずです。
人の視線は無意識に「見る順番」を決めている?
では、『視線誘導』はどうすればうまく活かせるのでしょうか。
そのためには、人が「何から見るか」「どこから見るか」について知ることが大切です。
視線の動きの法則を知ると、ユーザーに情報が伝わりやすいデザインや掲示の方法が見えてくるかもしれません。
人は「何から」見るか――情報の面積が伝わりかたを変える
年齢や性別を問わず、人の視線はまず大きなものに注目し、そこから小さいものへと動いていきます。
この「大→小」の法則は、イラストや記号といった画像系でも、文字の大きさでも同じです。
新聞・雑誌や広告の「見出し」はこの視線誘導を使った効果。一番に伝えたいことを大きく載せ、そこをスタート地点として内容へと導いていきます。
もしすべての画像や文字がまったく同じ大きさだと、情報をざっと読み飛ばされてしまいがちです。
文字や画像の大きさにメリハリを付けて視線を誘導することが、しっかりと情報を伝えるポイントになります。
どこからどこへ流れていく?――人の心理が決める視線の動き
人は「大きなもの」から「小さなもの」へと視線を動しています。
これは視線の動きのスタート地点を決めるもの。
その後、視線はどういった動きをたどるのか……実は多くの人が無意識のうちに3つのタイプの視線移動を行っています。
- Zタイプ……パッと見てわかるための、視線の自然な動き
視線が、左上→右上→左下→右下と、アルファベットの『Z』の形に動くパターン。
横書きタイプのサイン看板やポスターなど、日常的に目にすることが多い視線誘導です。
最も注目されるのはスタート部分の左上。重要な情報やサインは、最初に見られるこの部分に大きく配置すると効果的になります。
Zタイプは四方の角で視線が止まり注目されるので、真ん中の部分は読み飛ばされる可能性が高くなります。
- Fタイプ……どんどん知りたくなる、情報深堀りムーブ
視線が左上から右上→左下→右下へとさがり、アルファベットの『F』の字を書くように動くパターン。
横書きの雑誌、web上のニュース・コラム記事、文章量のあるSNSなど「読ませる」情報が多いものに使われる視線誘導です。
まずは「見出し」など視線のスタート地点を決めたあと、具体的な内容を知るために下部へと動かします。
重要な情報は最初に目に入る左上→右上の部分に置き、伝えたい内容を下部につなげます。
ただしFタイプは下部にいくにつれ情報が読みとばされやすいことも覚えておきましょう。
- Nタイプ……縦書きタイプの基本の動き
視線が右上→右下→左上→左下と、アルファベットの『N』の形に動くパターン。
縦書きの文章のものにあてはまる法則で、雑誌や書籍、新聞などで多く目にする視線誘導です。
Zタイプと同じく、注目されやすいのは1行目にあたる右上→右下の部分と、最終行の左上→左下。
Nタイプの視線誘導が活躍している代表例は、マンガかもしれません。ページをめくらせる左側下部は「引き」と呼ばれ、読者に最も興味を持たせるような構図になっています。
視線の動きの法則を知ることは、“強いサイン看板”へとつながる。
『視線誘導』の法則を知ったうえで、さらにサイン看板を効果的にするのに必要なこと。
それは「何を伝えたいのか」をきちんと意識しておくことです。
文字の大きさや配置などさまざまなデザインや形があるサイン看板があります。数が多くてどれが効果的か迷ってしまうときは、ポイントを抑えて絞り込んでみましょう。
最も伝えたい情報は何か?
文字や図の大きさを変え、メリハリを付ける。
情報量はどれくらいか?
Z・F・Nパターンでどのタイプの視線誘導を使うのが効果的かを見極める。
伝える順番は正しいか?
案内や誘導など移動を伴う場合、ゴミ分別など識別が必要な場合など、情報が数段階に分かれているものは、正しい順番で見てもらえるデザインになっているかチェックする。
ほんの少しの意識の違いで、サイン看板を選ぶために必要なものが見えてくるはず……
“とりあえず置いてみる”よりも、人の心理や行動の法則にそって“ベストな形で置いてみる”へと変化しましょう!
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