男子トイレにサニタリーボックスを設置する目的と意義。自治体の設置状況とは
2022.08.03
業界コラム
皆さんはサニタリーボックスと呼ばれるゴミ箱をご存知でしょうか。女性の方であれば知っているという人も多いでしょうが、男性の方であればあまり聞きなれない方がいたとしても不思議ではありません。
この男性への認知度が低いサニタリーボックスですが、現在男性用トイレでの設置が広まっているのです。
そこで今回はサニタリーボックスとは何なのか、なぜ設置が望まれているのか、設置の際に気を付けるべき点などを解説していきます。
注目が集まる「男性用トイレ」のサニタリーボックス
まずはサニタリーボックスの概要について確認しましょう。サニタリーボックスという名前を初めて聞いたという方でも、知っておくべき情報を網羅できます。
サニタリーボックスの用途と設置場所
おりものシートや生理用ナプキンなど、使用済みの生理用品を廃棄する目的でトイレに設置されているゴミ箱です。これら生理用品は水に溶けない性質を持っており、使用したものをトイレで流してしまうとトイレ詰まりの原因になってしまいます。そのため、生理用品を廃棄する専用のゴミ箱を設置することで、適切に処分しています。
生理用品を廃棄する目的で設置されていることからも分かる通り、サニタリーボックスは女性用トイレ、もしくは男女兼用トイレに設置されるのが一般的です。そんな中、男性用トイレにもサニタリーボックスの設置の要望が高まっているのです。
生理用品を使用しない男性のトイレで、女性が使用するわけでもないのにサニタリーボックスの需要が上昇している理由は何なのか見ていきましょう。
増加する男性の前立腺がん・膀胱がんとサニタリーボックス
近年、日本でも食文化が欧米化してきたことが原因で、高齢の男性を中心に前立腺がんや膀胱がんになる方が増えてきています。
前立腺は射精の発射装置としての役割のほかに、排尿の際にも基点として大きな役割を担っています。そのため、前立腺がんを発症し、本来の前立腺の機能を果たせなくなると排尿障害を引き起こしてしまうのです。
また、膀胱は腎臓で生成された尿をため込んでおり、一定の量まで溜まると、尿道を通って排尿されます。しかし、膀胱がんになってしまうと、膀胱の内側に腫瘍が出来てしまい、頻尿や血尿などの症状を引き起こします。
たとえこれらのがんを手術により摘出したとしても、尿失禁や頻尿などの症状は残ると言われています。
日常生活においても、尿意を感じる頻度が増大し、時には我慢できずに漏らしてしまうようになります。これを防ぐために、おむつや尿漏れパッドを履いて過ごすことで対応するのが一般的です。
このように男性でもおむつや尿漏れパッドを使用する方が増えており、男性用トイレでも使用済みのおむつや尿漏れパッドを廃棄するサニタリーボックスが求められているのです。
※出典:日本対がん協会「がんの部位別統計」
※出典:国立がん研究センター「年次推移」
男子トイレの現状と動向
埼玉県、八潮市では老人福祉施設をはじめ、公民館や図書館などの公共施設のトイレ33か所にサニタリーボックスを設置しています。
熊本県庁の男子トイレでは30リットルの一般的なゴミ箱に「汚物入れ」という表示を貼付することで、サニタリーボックスとして活用しています。他にも初めて施設を訪れた方でもサニタリーボックスが設置されていることが分かるよう、男性用トイレ付近の目立つ場所に「サニタリーボックス設置トイレ」という表示をしています。
このように高齢の方が利用する施設を中心にサニタリーボックスを設置することで、おむつや尿漏れパッドを使用していても、自らの尊厳を保ちながら安心して生活できる社会を構築していけます。
今後は公共施設のトイレのみならず、民間の施設にも積極的に設置していく必要があるでしょう。
※出典:熊本県「男性用トイレにおけるサニタリーボックスの設置について」
※出典:八潮市「男性個室トイレにサニタリーボックスを設置」
災害対策・トランスジェンダーの配慮からも導入の必要性が高まる
男性用トイレではおむつや尿漏れパッドを廃棄する目的で活用が見込まれるサニタリーボックスですが、災害時にも汚物入れとして活躍します。
大きな地震によって配管が壊れると、トイレが機能しなくなり、汚物を流せなくなってしまいます。そこで、震災時には仮設用トイレが設置されるまで、災害用トイレを活用します。災害用トイレは袋の中に吸水力のある物を入れて、一定の回数使用したら袋を入れ替えていきます。
この際、汚物の入った袋を廃棄するサニタリーボックスがあれば、被災時もより衛生的に過ごすことが出来るでしょう。
他にも近年、トランスジェンダーの方への配慮として男性用トイレでのサニタリーボックスの設置が望まれています。トランスジェンダーとは身体上の性別と心の性別が異なる人を指します。
つまり、トランスジェンダーの女性は体の構造が女性であっても、心が男性のため、男性用トイレを使用することもあります。しかし、身体的特徴は女性のままであるため、生理用品をトイレで廃棄したい場合があるのです。
このとき、男性用トイレにサニタリーボックスがなければ、使用済みの生理用品を廃棄できません。こうしたトランスジェンダーの方への配慮からも、男性用トイレにてサニタリーボックスを設置する必要があるでしょう。
サニタリーボックスの設置の注意点
サニタリーボックスは使用済みの生理用品などを廃棄するトイレ用のゴミ箱です。
本来は女性が使用するトイレに設置されていました。しかし、近年男性もおむつや尿漏れパッドを使用する方が増えており、災害対策やトランスジェンダーの観点からも、男性用トイレへのサニタリーボックスの設置が望まれています。
その上で、トイレにサニタリーボックスを設置する際に注意しなければいけない点を紹介していきます。
男女共有のサニタリーボックスの不快感
男女を問わずサニタリーボックスを設置する際の注意点として、とにかくサニタリーボックス周辺を清潔にするということが挙げられます。
サニタリーボックスはトイレ用のゴミ箱であるため、どうしても汚くなりがちです。女性ならば使用済みの生理用品、男性ならば使用済みのおむつや尿漏れパッドなどが廃棄されているでしょう。
そのため、掃除を怠ってしまうと、雑菌が繁殖したり、悪臭を放つ原因となってしまいます。人によっては触りたくないと感じるかもいるかもしれません。しかし、利用する方たちにとっては、外出を快適に過ごすために不可欠の存在です。利用する際にはネガティブな気持ちではなく、ポジティブな気持ちで使いたいはずです。
サニタリーボックスの中身を定期的に交換する、サニタリーボックス周辺の掃除を細目に行うなど、清潔な状態を保つことで、男女問わず不快感なくサニタリーボックスを利用できるでしょう。
逆に、こうした配慮がなされていない施設は利用者からも敬遠される恐れがあります。サニタリーボックスを設置する際には、清掃員に対して定期的にトイレを清掃するようマニュアルを改良するのがおすすめです。
サニタリーボックスをめぐるトラブルと注意点
サニタリーボックスをめぐる問題点として、一般の利用者がサニタリーボックスをただのゴミ箱だと間違えてしまうということがあります。
サニタリーボックスは決して容量が大きいわけではないため、一般のゴミも一緒に廃棄されてしまうと、すぐに満杯になってしまいます。これではせっかくサニタリーボックスを設置したとしても、生理用品やおむつを廃棄できなくなってしまいます。そこで、サニタリーボックスの設置理由を但し書きやポスターなどで示し、目立つ場所に表示してあげると良いでしょう。
サニタリーボックスをただのゴミ箱として利用してしまう方の中には、サニタリーボックスという存在自体を知らないという方も少なくありません。特に男性用トイレでのサニタリーボックスに関してはまだまだ普及していないため、存在そのものを知らないという方がいても不思議ではありません。
サニタリーボックスの設置理由が分かるように表示してあれば、どういった人がどのように利用するのかが誰でも理解できるようになります。これにより、サニタリーボックスに紙くずが廃棄されてしまうようなことは少なくなるでしょう。
サニタリーボックスの種類とおすすめの業務用製品
では最後にサニタリーボックスの種類とおすすめの業務用製品も紹介していきます。
ここまででサニタリーボックスの設置理由や設置する際の注意点を把握したものの、具体的にどういった物を設置すればよいのか分からないという方はぜひ参考にしてください。
サニタリーボックスの種類
ひとえにサニタリーボックスと言っても、様々な種類があります。それぞれに特徴があり、利用者のニーズに沿ったものを選ばなければ、設置しても高い満足度を得られないかもしれません。
まずはサニタリーボックスの種類について簡単に解説していくので、自分にはどういった物が良いのかを把握していきましょう。
材質
サニタリーボックスに使用される素材は様々なものがあります。気兼ねなく使えるプラスチック製、丈夫で倒れにくいスチール製、水気にも強いステンレス製の物などが一般的です。
少し特殊なものだと、段ボールを素材に使用した使い捨てのサニタリーボックスもあります。それぞれの材質ごとに、水への強さや耐久性、持ち運びやすさなどの違いがあるため、使用用途に適した製品を選びましょう。
大きさ
基本的にはトイレの広さを考慮した上で、排泄の邪魔にならない大きさのサニタリーボックスを選ぶと良いでしょう。また、男性トイレにサニタリーボックスを設置するのならば、10L前後の容量が必要になります。
当然ながら、男性が使用するおむつや尿漏れパッドは、女性用の物よりも大きくなります。その分、廃棄する際にも容量の大きいゴミ箱が必要になります。はじめから容量の大きいサニタリーボックスを設置しておけば、すぐにいっぱいになってしまうこともありません。
見た目
サニタリーボックスには一般的な四角形のタイプの他に、筒状のタイプや三角柱型のタイプなどデザイン性のある物もあります。
トイレに設置する物とはいえ、頻繁に目につく物でもあります。そのため、見栄えにもこだわりたい場合は、トイレに使用されている色や施設内の雰囲気などを考慮して選ぶのもおすすめです。
一方で、デザインばかりに気を取られると、利用者がサニタリーボックスだと分かりづらくなる恐れもあります。誰でも一目でサニタリーボックスだと認識できるような、分かりやすさも忘れないようにしましょう。
機能(蓋の開閉・ごみの捨てやすさなど)
サニタリーボックス自体の機能にも着目しましょう。サニタリーボックスに蓋が付いている種類であれば、内部の嫌な臭いを防げるだけでなく、廃棄された物を見てしまうこともなくなります。
また、自動開閉機能が付いていれば、より衛生的にサニタリーボックスを利用できるでしょう。近年では感染症の影響もあり、多くの人が触れるような箇所に極力触りたくないという方も増えています。
機能が付いている物を選ぶ際には、その機能によってどういったメリットがあるのかを考えておくのがおすすめです。
サニタリースリムボックス アーバングレー
こちらの製品は縦長の四角柱の形をしたサニタリーボックスになります。縦長になっているため、利用者がゴミを廃棄する際にも、中に入っているゴミを目にすることがなく快適に利用できます。
また、展開されている色も「オフホワイト」と「アーバングレー」の2種類であり、どちらも都会的な印象を与える洗練された外観です。8Lの容量なので男性用トイレのサニタリーボックスとしても活用できるでしょう。
※関連商品:サニタリースリムボックス アーバングレー
男子サニタリーボックスは今後、さらに普及する
従来のサニタリーボックスは女性用トイレを中心に設置されていた、使用済み整理用品などを廃棄するゴミ箱です。
近年は高齢の男性を中心に前立腺がん、膀胱がんを患う方が増えています。たとえ医療によって治ったとしても頻尿、尿漏れなどの症状が残る場合も多く、おむつや尿漏れパッドを利用する方も増えてきました。そこで使用済みのこれらを廃棄するサニタリーボックスの設置が男性用トイレでも望まれるようになっているのです。
また、サニタリーボックスを設置することは、トランスジェンダーの方への配慮にもつながります。反対にサニタリーボックスを設置しないということは、これらの需要への対応をしていないとみなされる恐れもあるでしょう。
今後は高齢の方も増えてくるため、ますます男性用トイレでのサニタリーボックスの需要も増えてきます。サニタリーボックスを女性だけのものと考えず、柔軟に対応するのが重要になるでしょう。