廃棄プラスチックは、どうリサイクルされる? ――意外に知らない、3つのリサイクル方法とこれからの課題
2023.08.09
業界コラム
コンビニやスーパーでのレジ袋の有料化、飲食店で使われるストローの素材や使い捨て食器の削減・・・ここ数年、世界的に脱プラスチックの流れが大きく動き始めています。
日本でも、2022年4月から『プラスチック資源循環促進法』が施行されました。
この法律では、主に事業者や市町村による分別・自主回収・リサイクルを促進しています。
廃棄プラスチックの現実
日本の廃棄プラスチックの量は、近年のデータによると1年間で約822万tほど。
そのうち約710万tがリサイクルにより有効利用されています。
リサイクル率は約86%と、一見すると非常に高く見えますが「リサイクル方法」のことを知っていくと、これからの日本が解決すべき問題が見えてきます。
廃棄プラスチックが、どのようにリサイクルされていくのかを知ってみましょう。
3つのリサイクル方法
自治体や企業、施設などから回収された廃棄プラスチックは、現在3つのリサイクル方法で処理されています。
廃棄プラスチック全体のリサイクル率約86%はこのような割合になっています。
- サーマルリサイクル……62%
- ケミカルリサイクル……3%
- マテリアルリサイクル……21%
- 再資源化が難しいものを、エネルギーとして有効活用できる
- 分別にかかるコストが比較的軽い
- 焼却することで廃棄物の体積を小さくでき、埋立地などのスペースを減らせる
- 廃棄処理に焼却が必要(二酸化炭素・有害物質を排出する)
- 他のリサイクル方法と違い、処理されたものを原材料として利用できない
- 発電効率が低い
- 汚れがついていたり、種類の違う廃棄プラスチックが混ざっていても可能
- 廃棄プラスチック自体が原材料として再生できるので、ガスや油といった限りある資源を守れる
- 新たなプラスチック素材の製造過程で発生する二酸化炭素排出量を減らせる
- 科学的処理を行うための施設を建設、維持するために膨大な費用が必要
- 設備への廃棄プラスチックの運搬にコストがかかる
- 科学的処理を行うためのエネルギーが必要
- 焼却処理をしないため、二酸化炭素排出量を少なくできる
- 焼却灰など最終的に埋立処理する必要がほとんどない
- 廃棄物をそのまま原材料へと再生させるので、限りある資源を守れる
- 異物混入、違う種類のプラスチックの混入がないか手作業で分別が必要
- 家庭ごみでは分別コストが高すぎてマテリアルリサイクルが困難
- 原材料としての品質を保つため、リサイクルで作れる製品が限られる
- キャップ、ペットボトル本体、ラベルと細かく分別することを促進するデザイン
- 飲み残しを捨てられる設備をつくる
- 投入口を下側に向けて、ペットボトル、ビン、缶以外のゴミを投入しにくくする
- リサイクルボックス本体を透明にして、中に何が入っているのか見えやすくする
- 投入口部分を斜めのデザインにして、上にゴミを置きづらくする
- ゴミ箱自体にAIを搭載し、投入されたゴミを種類別に分別する
- 回収されたゴミをAIを使ったセンサーでスキャンし、リサイクルできるものをピックアップする
-
この3つの方法でリサイクルできない廃棄プラスチックは、焼却・埋立といった形で処理されます。
サーマルリサイクル
日本における廃棄プラスチックの主流となっているサーマルリサイクル(Thermal Recycle)。
直訳すると「熱回収」という意味で、「エネルギー回収」と呼ばれることが多いです。
主にプラスチック等の廃棄物を焼却した時に発生するエネルギーを、熱や蒸気として回収し、発電・施設の暖房・温水供給などに使います。
メリット
デメリット
コスト軽減などのメリットもあり、日本では6割を占めるサーマルリサイクルですが、海外ではリサイクルとして認められていない場合が多いです。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクル(Chemical Recycle )とは、直訳すると「科学的(ケミカル)に再生・再利用する」という意味。
廃棄プラスチックを科学的に処理・分解することで、原料にもどします。
高温で熱処理し分解された廃棄プラスチックは、油・ガス・コークスなどの原料に生まれかわります。
他にも分子レベルまで分解して、再びプラスチック製品やナイロン素材などを作るための原料にするサイクル方法もあります。
メリット
デメリット
国内のケミカルリサイクル率は、わずか3割。
メリットが大きいにも関わらず普及しないのは、やはりコストの高さが原因と言えます。
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクル(Material Recycle) とは直訳すると、「物・原料(マテリアル)を再利用する」という意味。
廃棄プラスチックの場合は、分別・洗浄などを行ったあと、粉砕したり加工することで、再びプラスチックを作る原材料として利用します。
例えば、廃棄されたペットボトルを粉砕したフレークを原材料にし、新しいペットボトルや衣類の原材料、食品用トレイなど他の製品などにリサイクルされます。
ケミカルリサイクルとの違いは、科学的処理や分解を行わないことです。
メリット
デメリット
世界的にも、リサイクル方法として優先度が高いのがこの「マテリアルリサイクル」。
しかし日本の廃棄プラスチックのリサイクルでは、全体の約2割ほどしかマテリアルリサイクルが行われていません。
普及率が低い最も大きな理由は、分別コスト。
品質を保つためには、徹底した分別・洗浄が必要になり、そのほとんどが手作業で行われています。
資源枯渇問題の解決、二酸化炭素排出量の軽減のためには、マテリアルリサイクル率をあげることが必要不可欠です。
マテリアルリサイクル促進のために始まる、さまざまなチャレンジ
そんな中、ペットボトルなどの飲料を扱うメーカーなどでは、自動販売機近くに設置するゴミ箱に着目して、さまざまな挑戦を始めています。
駅などの交通機関や商業・公共施設で必ず見かける自動販売機。
併設されているゴミ箱には、残念ながらペットボトル・ビン・缶以外のゴミが混入する比率が高いのが現状です。
そこで企業では「ゴミ箱」ではなく、資源を再利用するための「リサイクルボックス」という意識を広めることから始めました。
このように、形やデザインに工夫を加えたリサイクルボックスの設置を行って実験してみたところ、異物混入率が約3割~5割程度下がったという結果も出ています。
他にも、海外ではAI(人口知能)を使ってゴミの分別技術が開発されています。
まだまだ実験段階ですが、もし実現すれば最大のコストである〝手作業での分別〟が解決でき、マテリアルリサイクルを大きく普及させる技術です。
毎日触れているペットボトルやプラスチック製品が、どういった形でリサイクルされていくのか?
その流れを知ることも、リサイクルの第一歩です。