“ウィズコロナ”から“アフターコロナ”へ、インバウンド需要はどう変わる?
2023.09.27
業界コラム
2020年から全世界的に広まった新型コロナ感染症。その影響は日本にも大きなダメージを与えました。感染症対策のため、海外からの渡航者は約3年間に渡り厳しい制限がかけられました。
インバウンド消費は日本の経済にとって欠かせない要素のひとつです。
新型コロナ感染症が、5類と分類されることとなった2023年。
コロナ禍で変化した社会のなかで、日本の観光業界の今後が注目されています。
コロナ禍の出来事と、渡航者への対応
――2020年
中国で感染症対策のための海外渡航禁止とロックダウンが開始。
アジア各国でも国境間の移動制限が始まりました。
ヨーロッパではイタリアでの感染拡大をきっかけに、入国制限を行う国・地域が出始めます。
4月からは日本でも海外からの渡航禁止が開始、1ヶ月以上に渡る緊急事態宣言が全国的に発出されました。外国人旅行客はほぼゼロに。
11月頃からはヨーロッパを中心に第三波と呼ばれた感染拡大が始まり、海外渡航はより厳しくなります。
日本でも、ビジネス目的や留学生も含めた全ての外国人の入国が禁止されました。
――2021年
致死率が高い「デルタ株」、感染力が強い「オミクロン株」と呼ばれた変異株が世界的に流行しました。日本でも感性拡大は止まらず、1月から9月末にかけて3度も緊急事態宣言が発令されます。
7月には、前年から延期された「東京オリンピック2020」が無観客で開催。
海外選手や取材クルーなどには厳しい移動制限がかけられました。
――2022年
帰国者の自主待機期間が、14日間から段階的に短縮され、最終的には7日間になりました。
国内外でのワクチン接種がすすむなか、一定の条件を満たせば空港からの公共交通機関の使用ができるようになります。
4月からは1日の入国者数が7000人から1万人に引き上げられ、留学生やビジネス目的の渡航者が少しずつ増え始めました。
――2023年
コロナ禍が始まって3年。5月に新型コロナ感染症は、季節性インフルエンザと同じ「5類」に分類されると決定しました。
これにより海外からの入国者数制限、入国時のワクチン接種・陰性証明や検査といった水際対策がなくなりました。
アフターコロナの日本、訪日外国人数はどれくらいまで回復した?
コロナ感染症が5類移行となり、海外渡航者への「水際対策」がなくなった2023年。
日本を訪れる海外観光客は再び多くなりました。
2023年4月の訪日外国人数は、約194万人。コロナ禍前にあたる2019年に比べると約66%程度の回復率です。
【10万人以上の訪日外国人数があった国・地域】
韓国(約46万人)
台湾(約29万人)
アメリカ(約18万人)
香港(約15万人)
タイ(約10万人)
中国(約10万人)
とくにアメリカや、インドネシア、シンガポールといった東アジア地域からは、2019年を上回る訪日数となりました。
一方で、中国からの訪日者数は2019年と比べると約14%に留まっています。
海外旅行者が、日本に来たいと思う理由とは
2021年、世界経済フォーラムが発表した「観光魅力度ランキング」。
日本は117の国・地域のなかで1位に輝きました。
これは2007年にランキング調査開始以降、初めての快挙です。
感染症対策のため、約3年に渡り海外渡航者に厳しい制限をかけていた日本が、なぜ1位になったのでしょうか。日本が選ばれたのは、主にこのような理由でした。
- 交通インフラの充実
- 事件発生率の低い
- 自然、文化や娯楽観光施設の充実
- モバイル端末の普及
- 茶道や書道、禅といった日本特有の文化を自ら体験する
- 神社仏閣などで歴史やゆかりを学びながら観光する
- 観光地や温泉街などを、着物・浴衣を着て歩く
- その土地の名産品を食べる
- 桜・紅葉・雪など、季節ごとの自然と触れあう
- 観光地の交通機関で、地域住民の優先入場を行う
- 事前予約制など、観光地への入場規制を行う
- 主要観光地以外に、知名度が低いが魅力的なスポットへと誘導する
- 観光客が集中する時間帯・季節を分散させるようなイベントを実施する
- 守ってほしいマナーを、ピクトグラム等でどの国の人でもわかりやすいような提示をする
- トイレ等の公共インフラ、交通機関、観光地の各施設の混雑予測や空き状況をリアルタイムに発信する
- AI分析を使ったシステムによる混雑予測で、清掃・接客の効率化を促す
- 飲食店でタブレット端末で注文をうけ、ロボットによる配膳を行う
- キャッシュレス決済、金銭授受の自動化でレジ業務の負担軽減
- オンライン上で宿泊予約・決済などを行うことで、予約管理と手続きの負担軽減
- チェックイン・アウトなどを自動化して、ホテルフロント業務の負担軽減
新幹線・在来線など鉄道がほとんど時間通りに運行されている。
地方空港での乗り継ぎがしやすい。
交通機関などの案内板が、多言語対応・ピクトグラムを使用していて一目で理解しやすい。
殺人・強盗といった犯罪率が諸外国に比べて低く治安が良い。
街自体にゴミが少なく、清潔に感じる。
桜や紅葉など、自然のなかで季節ごとに変わる美しさがある。
神社仏閣、世界遺産など文化的な建物が多い。
テーマパーク、温泉、祭り、動物園など多岐にわたる娯楽施設がある。
ホテルなど宿泊施設のホスピタリティが高い。
交通機関で使用できるICカードが普及し、利用しやすくなった。
クレジットカード以外のキャッシュレス決済を導入している場所が多くなった。
こういった魅力のほかには、円安が進んでいることも旅行者が増える大きな理由のひとつです。
高級ホテルや旅館、料亭、レストランといった比較的高価な場所も、海外富裕層にとっては「お得」に感じられる魅力になっています。
訪日外国人が求めるものの変化
コロナ禍前のインバウンド需要として注目されていた「爆買い」。
食品・医薬品・化粧品・ベビー用品といった日用品から、家電・ゲーム機などの高額商品まで、さまざまな商品を大量に買い込む外国人観光客が日本を訪れていました。
買物を目的としたバスツアーが組まれたり、「爆買い」のための顧客向け店舗ができたほどです。
しかし、インバウンド需要はこういった商品を買い求める「モノ消費」から、体験を求める「コト消費」へ変化し始めています。
コト消費とは
回復するインバウンド需要で見えてきたこと
2023年の訪日外国人数は順調に回復傾向にあります。
実際に観光地として人気の高い東京・浅草、京都、奈良、大阪といった場所では外国人観光客の数が目に見えて増えています。
ほかにも2023年5月に行われたG7広島サミットで、各国の首相が訪れた広島が観光地として注目されています。
観光業界や飲食業界にとって、インバウンド需要の回復はずっと待っていたもの。
しかしコロナ禍を経て、ひとつの問題が浮かびあがってきました。
それは「オーバーツーリズム」と「人手不足」です。
オーバーツーリズムへの対策とは
オーバーツーリズムとは、地域のキャパシティ以上の観光客がやってくること。
日本だけでなく世界各国の観光地で起こっている問題です。
具体的には街中での人混み、交通渋滞や電車・バスの混雑、トイレ不足、騒音・ゴミの散乱などがあります。
京都や鎌倉では、地域住民の足となる電車やバスが観光客で溢れて乗れないといった問題がニュースになりました。
また、ホテルの予約がとりづらくなり、出張などビジネス目的での宿泊が難しくなるという事態も起こりつつあります。
オーバーツーリズム対策は、観光地にとって避けては通れないもの。
インフラ整備などの課題とともに、各地域が行っている対策の一例をピックアップしてみました。
インバウンド需要に必要な人手が足りない――解決するには?
ホテルや旅館といった宿泊施設、旅行客が多く訪れる飲食店などで深刻になっているのが、人手不足です。
観光・飲食業界ではコロナ禍での業績不振から、従業員の削減を行わざるを得ませんでした。
退職した多くの人員は他業種へ転職し、再びスタッフを募集しても集まらず人手不足となっています。
結果として、営業日や時間を短縮して営業しなければならない店舗・宿泊施設が増えてしまったのです。
深刻な人手不足はすぐに解決しづらい問題です。
そこで必要とされているのは、限られた数の人員で効率的に営業すること。
ここ数年、さまざまな業界で導入されているデジタル技術を用いて、問題を解決しようとする流れが進んでいます。
混雑予測システムで清掃の効率化
テラモトが提供するTERAS PLACE(テラスプレイス)は、トイレの利用状況の可視化とデータ収集・分析などが可能なデジタルツールです。混雑状況を可視化できるため、清掃スタッフは空いているトイレから掃除することが出来て、清掃作業を効率化することができます。
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このようなデジタル技術等を用いた業務効率化を、どのように取り入れていけるか?
今後、問われていく大きな課題です。