2024年労働安全衛生法改正で保護具着用ルールはどう変わる?
2024.03.26
商品の選び方
業界コラム
日本における化学物質を原因とする労働災害は多く、年間400件ほど報告されています。中でも、皮膚から化学物質が吸収されるケースが最も多く、吸入・経口ばく露の約4倍もの件数にのぼります。また近年では、皮膚性刺激はなくても皮膚から吸収されたことにより発がんに至ったと疑われるケースも発生しています。
このような背景を受けて労働安全衛生法の一部が改正され、これまで努力義務だった保護具の着用が2024年4月から義務化されます。
そこで本記事では、労働安全衛生法改正に伴う保護具着用ルールの変更について解説してきます。
健康被害が明らかな物質を使用する際は着用義務
条文は以下のように改正されます。
第594条事業者は、皮膚若しくは眼に障害を与える物を取り扱う業務又は有害物が皮膚から吸収され、若しくは侵入して、健康障害若しくは感染をおこすおそれのある業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、塗布剤、不浸透性の保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡等適切な保護具を備えなければならない。
2 事業者は、化学物質又は化学物質を含有する製剤(皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがあることが明らかなものに限る。以下「皮膚等障害化学物質等」という。)を製造し、又は取り扱う業務(法及びこれに基づく命令の規定により労働者に保護具を使用させなければならない業務及び皮膚等障害化学物質等を密閉して製造し、又は取り扱う業務を除く。)に労働者を従事させるときは、不浸透性の保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡等適切な保護具を使用させなければならない。
3 事業者は、化学物質又は化学物質を含有する製剤(皮膚等障害化学物質等及び皮膚若しくは眼に障害を与えるおそれ又は皮膚から吸収され、若しくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがないことが明らかなものを除く。)を製
造し、又は取り扱う業務(法及びこれに基づく命令の規定により労働者に保護具を使用させなければならない業務及びこれらの物を密閉して製造し、又は取り扱う業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該労働者に保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡等適切な保護具を使用させるよう努めなければならない。
つまり、健康被害を起こすおそれのあることが明らかな物質を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者は、保護眼鏡、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履物等適切な保護具の使用が義務化されます。
一方で、健康被害を起こすおそれがないことが明らかな物質の場合は保護具の着用は不要で、両者の中間のないことが明らかでない物質の場合は努力義務のままとなります。
対象となる製品はSDSで確認
ではどの製品に、健康被害を起こすおそれのあることが明らかな物質が含まれているのでしょうか?
確認するためには、使用・製造している製品のSDS(安全データシート)を入手する必要があります。SDSは、メーカーのホームページなどからダウンロードすることが可能です。
ダウンロードしたSDSの『2. 危険有害性の要約』を確認してみてください。
様々な危険性が記載されていますが、その中でも
・皮膚腐食性・刺激性
・眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性
・呼吸器感作性又は皮膚感作性
の3つの項目の内いずれかが区分1に該当していれば、健康被害をおこすおそれのあることが明らかな物質が含まれていることになるため、扱う際には保護具の着用が必須になります。
対象となる製品を取り扱う労働者全てが対象
先述した通り、対象となる製品を取り扱う労働者全員が保護具着用義務の対象となります。
漂白剤や洗剤に含まれる、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなども『健康被害を起こすおそれのあることが明らかな物質』であるため、飲食店の厨房で働かれている方や、薬剤を使った洗浄・消毒作業をしている清掃員の方も対象となります。
ぜひ一度、ご利用中の薬剤のSDSをご確認ください。
保護具の選び方
着用が義務化される保護具は、先述した労働安全衛生法594条の2に記載されている『不浸透性の保護衣、保護手袋、履物又は保護眼鏡等適切な保護具』を指します。
この段落では、保護手袋、保護衣、保護眼鏡について解説します。
保護手袋
保護手袋にも、溶接・溶断作業に使用する『溶接用かわ製保護手袋』や電気回路作業に使用する『電気絶縁用保護具』など、目的によってさまざまな種類があります。
今回の法改正で着用が義務化されるのは『化学防護手袋』という種類のもので、化学防護手袋は、JIS T 8116にて以下のように定義されています。
酸、アルカリ、有機薬品、その他気体及び液体又は粒子状の有害化学物質を取り扱う作業に従事するときに着用し、化学物質の透過及び/又は浸透の防止を目的として使用する手袋
手袋を選ぶ際はJIS規格に適合した商品を選ぶ必要があります。
保護衣
保護衣にも、全身を保護する『気密服』や体の一部を保護する『部分化学防護服』などの種類があり、JIS T 8115では以下のように定義されています。
酸,アルカリ,有機薬品,その他の気体及び液体並びに粒子状の化学物質(以下,化学物質という。)を取り扱う作業に従事するときに着用し,化学物質の透過及び/又は浸透の防止を目的として使用する防護服
保護衣も選ぶ際はJIS規格に適合した商品を選ぶ必要があります。
保護眼鏡
保護眼鏡にも種類があり、正面からだけの飛沫から保護するタイプや側面の飛沫からも保護するタイプ、ゴーグルタイプなどがあります。
薬品の取り扱い方に合わせたゴーグルをお選びください。
また、テラモトでは以下の保護眼鏡も取り扱っております。
眼鏡の上からでも付けられる軽量ゴーグルとなっております。
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まとめ
2024年4月から義務化される保護具着用義務について解説しましたが、必要な保護具はわかりましたでしょうか?
保護具を正しく身に着け、安心安全な労働環境を目指しましょう。