グリーンボンドとソーシャルボンドの違いとは|原則や理論、テラモトが投資表明した背景
2024.04.10
業界コラム
「グリーンボンド」とは、環境改善効果が見込まれるプロジェクトへの資金調達の際に発行される債券であり、「ソーシャルボンド」は、社会的課題の解決に貢献するプロジェクトの資金調達に発行される債券です。
全世界的に環境問題や社会問題に対する注目が集まっている昨今、これらの問題を解決するために、多くの企業や投資家の間でESG投資が求められています。ESG投資の一環ともいえる「グリーンボンド」と「ソーシャルボンド」への投資に注目が高まっています。
2024年2月7日、株式会社テラモトはこの度「グリーンボンド」と「ソーシャルボンド」への投資を決定しました。
ここでは、より具体的に「ソーシャルボンド」や「グリーンボンド」について紹介していきます。
※関連ページ1:独立行政法人日本学生支援機構が発行する 「ソーシャルボンド」への投資について
※関連ページ2:大阪府が発行する「グリーンボンド」への投資について
グリーンボンドとは
そもそもESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を表しており、これらの要素を考慮した投資手法がESG投資と呼ばれています。
そのため、「グリーンボンド」への投資もESG投資となります。では、より具体的にグリーンボンドの概要について見ていきましょう。
グリーンボンドの原則とガイドライン
環境省はグリーンボンドへの信頼性の確保や国内におけるグリーンボンド普及などを目的に、「グリーンボンドガイドライン」を作成しています。
そのガイドラインによるとグリーンボンドとして認められるには以下の3つの項目を満たす必要があります。
・調達資金の使用用途はグリーンプロジェクト(環境問題の解決に貢献する事業)に限定される
・調達資金は確実に追跡管理される
・それらについて発行後のレポーティングを通じて透明性が確保される
また、こういった特徴を持つグリーンボンドへの投資主体としては、「ESG投資を行うことを表明している年金基金、保険会社などの機関投資家」や「ESG投資の運用を受託する運用機関」「資金の使途に関心を持って投資をしたいと考える個人投資家」などが考えられています。
グリーンボンドの種類
グリーンボンドガイドラインでは、グリーンボンドの種類として以下の4種類を定めています。
・『Standard Green Use of Proceeds Bond』:特定の財源に関わらず、発行体全体のキャッシュフローを原資として償還を行う債権
・『Green Revenue Bond』:調達した資金が用いられる公的なグリーンプロジェクトにおけるキャッシュフローや、それにかかわる公的施設の利用料、特別税などを原資に償還を行う債権
・『Green Project Bond』:調達した資金が用いられる単一、もしくは複数のグリーンプロジェクトのキャッシュフローを原資として償還を行う債権
・『Secured Green Bond』:調達した資金が特定の条件を満たしたグリーンプロジェクトのファイナンス、もしくはリファイナンスのために用いられる担保付債権
このようにグリーンボンドは、グリーンプロジェクトに対して必要な資金を調達するために発行する債券となっていることが分かります。
グリーンボンドを発行・投資するメリット
当然ながら事業に対する債券を発行するだけならグリーンボンドである必要はありません。
そうした中、あえてグリーンボンドで債権を発行し、そこへ投資を行うメリットを見ていきましょう。
環境省ではグリーンボンドを発行するメリットとして以下の項目を挙げています。
環境問題へ取り組む事業家や、そこへ関心を占める投資家との対話を通じてサステナビリティ経営を高度化する
グリーンプロジェクトへ積極的に取り組んでいる旨のアピールとなり、社会的な支持を獲得できる など
一方、グリーンボンドへ投資するメリットとしては次の項目が挙げられています。
グリーンプロジェクトへ積極的に資金を供給し、支援をしていることへのアピールとなり、社会的な支持を獲得できる
通常の債権などと比較して、ボラティリティが低く抑えられる可能性がある など
このようにグリーンボンド市場ではグリーンプロジェクトへ関心がある事業家や投資家が集まるため、環境問題解決へ向けて貢献したい両者にとって様々なメリットがあるのです。
ソーシャルボンドとは
ソーシャルボンドは社会問題に対する事業を指しており、こちらもESG投資の対象となっています。
では具体的にソーシャルボンドの概要について見ていきましょう。
ソーシャルボンドの原則とガイドライン
ソーシャルボンドでもグリーンボンド同様に、信頼性の確保や国内での普及などを目的に「ソーシャルボンドガイドライン」が金融庁によって作成されました。
そのガイドラインによるとソーシャルボンドとして認められるには以下の3つの項目を満たす必要があります。
・調達資金の使用用途が発行体により、適切に評価・選定されたソーシャルプロジェクトに限定される
・調達資金は確実に追跡管理される
・それらについて発行後のレポーティングを通じて透明性が確保される
グリーンボンドと同じく、調達された資金の使用用途は社会的問題を解決する事業に限定され、資金の使用先の透明性が担保されているのが特徴です。
ソーシャルボンドの種類
ソーシャルボンドの種類としては主に以下の3種類が挙げられます。
・『Standard Social Use of Proceeds Bond』:特定の財源によらず、発行体全体のキャッシュフローを原資として償還を行う債権
・『Social Project Bond』:特定のソーシャルプロジェクトを行うSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)へ、その事業に運営に必要な施設の整備や運営等を資金使途として発行し、事業の収益のみを原資として償還を行う債権
・『Social Securitised Bond』:、ソーシャルプロジェクトに係る資産を担保とし、これらの資産から生まれるキャッシュフローを原資として償還を行うソーシャル証券化債権 など
グリーンボンドと同じく、償還方法やソーシャルプロジェクトの種類、商品の概要などによって様々なソーシャルボンドが発行されています。
ソーシャルボンドを発行・投資するメリット
ソーシャルボンドガイドラインでは、ソーシャルボンドを発行・投資するメリットについてもそれぞれ紹介しています。
・ソーシャルボンドを発行するメリットとしては主に以下の項目が挙げられています。
・ソーシャルプロジェクトへ積極的に取り組んでいる旨をアピールすることができ、顧客や取引先などの事業に関わるステークホルダーからの支持獲得が期待できる
・ソーシャルボンドへの取り組みを通じて、企業内の戦略やリスクマネジメント、ガバナンス体制などが整備されサステナビリティ経営が高度化する
・ソーシャルボンドへの取り組みが、リスク耐性の向上やステークホルダーからの指示につながることで、企業の市場評価向上が期待できる
一方、ソーシャルボンドへ投資する投資家のメリットとしては主に以下の項目が挙げられます。
ソーシャルプロジェクトへ積極的に投資することが社会的な支持の獲得につながる可能性がある
ソーシャルボンドでは資金用途が限定されており、資金の流れが可視化されているため、ソーシャルプロジェクトの社会的な効果を見定めたうえで投資の意思決定を行うことができる
このように、ソーシャルボンドの発行にはいくつかの条件があり、調達資金の使用用途にも制限があるものの、発行体だけでなく投資家にもメリットがある制度となっています。
グリーンボンドとソーシャルボンドの違い
ここまで、グリーンボンドとソーシャルボンドについて解説してきましたが、これらは言葉や概要が似ているので混同してしまいがちです。
改めてこれら2つの違いについて見ていきましょう。
グリーンボンドでは、地球温暖化や海洋汚染などの環境問題の解決へ向けて取り組む事業が対象となっています。
テラモトでは大阪府が発行するグリーンボンドへの投資を表明しており、「気候変動への適応」として実施される河川改修、高潮対策や農地防災対策等の風水害対策事業や、「クリーン輸送」として実施される公共交通機関の整備による自動車利用の削減対策事業へ資金が充当されます。
ソーシャルボンドでは、人工や福祉、教育などの社会的課題の解決へ向けて取り組む事業が対象です。
テラモトは独立行政法人日本学生支援機構が発行するソーシャルボンドへの投資を表明しており、奨学金事業の内、貸与奨学金の財源として資金が用いられます。
このように、グリーンボンドとソーシャルボンドは、対象となる事業や解決する問題が異なり、投資家はどういった事業へ投資したいのかあらかじめ明確にしておく必要があるでしょう。
テラモトがグリーンボンドとソーシャルボンドに投資した背景
テラモトは環境美化用品を製造・販売するメーカーとして「快適環境創造の実現」を目指しています。
その一環として、大学での講義や大学生との意見交換、自治体への現地訪問なども実施しました。
安心かつ快適な環境を実現するためには、優れた製品を製造・販売することだけでなく、こうした活動も重要だとテラモトは考えています。
また、日本で活動する企業として、環境問題や社会的課題の解決へ向けた取り組みに対して、社会的責任があるとも認識しています。
そのため、グリーンボンドやソーシャルボンドへの投資は不可欠であり、今後も継続的な投資を行うことで、社会的責任を果たしてまいります。