喫煙スペースをとりまく変化 ――〝防災〟を通して、不要な場所から役立つ場所へと生まれ変わる。
2024.04.17
業界コラム
2020年4月に全面施行された、健康増進法の一部改正。
これにより、喫煙をとりまく環境が日本全国で大きく変わりました。
多くの人が利用する場所は、原則的に『屋内禁煙』となりました。
『分煙化』が進んだ現在――たばこを吸う人・吸わない人のどちらも満足できる社会を目指して、喫煙環境は新たな一歩を踏み出そうとしています。
いま、たばこが吸える場所はどう変わった?
『分煙化』がすすんで、喫煙できる場所にはたくさんの条件のクリアが必要になりました。
屋内でたばこを吸える場所は?
法律で、学校・病院・行政機関・交通機関といった場所は『敷地内禁煙』とされています。
この他の、オフィス・商業施設・飲食店・スポーツ施設・工場など、多くの人が利用する場所は原則『屋内禁煙』。
屋内禁煙の場所では、条件を満たした『喫煙室』の設置ができ、たばこを吸うことができます。
屋内喫煙室に必要な条件
- 出入口で、室外から室内に流入する空気の流れが、0.2m毎秒以上あること。
- たばこの煙が室内から室外へ流出しないように、天井・壁などで区画されていること。
- たばこの煙が屋外や外部へ排気されていること。
- 20歳未満の立ち入りを禁止すること。
屋外でたばこを吸える場所は?
『敷地内禁煙』と定められている場所以外では、屋外喫煙スペースに関して規制はありません。
だからといって、屋外ならどこでもたばこを吸えるわけではありません。
路上喫煙・歩きタバコは多くの自治体で禁止されています。
また、規制の対象外である屋外・私有地内であっても、望まない受動喫煙を防ぐための『配慮義務』があります。
配慮義務は、お店やビル管理者・行政といった〝喫煙スペースを設置する側〟と〝たばこを吸う人〟のどちらも気を付けなければいけません。
屋外喫煙スペースに求められる配慮
- パーテーション等で区切り、周囲にたばこの煙が流出しないようにすること。
- 人通りの多い場所の設置は避けること。
- 近隣の建物・施設・民家にたばこの煙が届かないようにすること。
- 喫煙スペースであるとわかりやすく掲示すること。
- 飲食店など営業時間がある場所の屋外喫煙スペースは、閉店後などには片づけること。
……など、受動喫煙を防ぐための配慮が必要です。
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弊社のパーテーションは、移動が簡単、設置が容易で、曲線のレイアウトにも対応可能です。
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日本の喫煙の現状は?
平成30年(2018年)、たばこを吸う人の数を調査したところ、成人男性では平均約27.8%でした。
喫煙者の数がもっとも多かった昭和40年代では約83%。
この約50年の間で、成人男性の喫煙者はかなり減少気味にあります。
しかし年齢別に見ると、もっとも喫煙者の多い年代は40歳代で、30歳~50歳代を平均すると35%前後という、決して少ないとは言えない結果も出ています。
一方で、成人女性の喫煙率は約8.7%、ゆるやかに減少気味ではありますが、ほぼ横ばい状態です。
女性でも、喫煙者がもっとも多いのは40歳代となっています。
喫煙者の吸っているたばこの種類も、近年大きな変化がありました。
「たばこ」というと一般的には、紙巻きたばこが主なものでした。
しかし2014年頃から「加熱式たばこ」の発売が始まり、年々シェア率があがっています。
加熱式たばこは火を使わないため、燃焼による煙や副流煙が発生しません。
においも少なく、喫煙者全体の約38%が加熱式たばこを選んでいます。
とくに20歳~30歳代の若い世代では、ほぼ半数という高い割合で普及しています。
減り続けた〝たばこを吸える場所〟――その理由とデメリット
原則屋内禁煙となった現在、たばこが吸えるのは、基準を満たした『喫煙室』のみ。
オフィスビルや商業施設など、もともと喫煙室が設置されている場所が多くありました。
しかし、新たに喫煙室を設置するにはコストがかかります。
喫煙スペースを設けず全面禁煙にする飲食店や中・小規模のオフィスなども増えてきました。
また、人が集まりやすく密室状態になる喫煙室は、コロナ禍の感染防止のため閉鎖されていきました。
屋外の喫煙スペースも、ここ数年でいっきに数が減りました。
とくに首都圏では、2021年の東京オリンピック開催をきっかけに、受動喫煙防止対策が厳しくなり、駅前や広場など公衆屋外喫煙スペースが相次いで閉鎖しました。
このため、30~50歳代の男性という、もっとも喫煙者の多い世代が集まりやすいオフィス街では、屋外・屋内ともに喫煙スペースが足りない状況に。
結果として、オフィス街に近い公園・広場・路上での喫煙やたばこのポイ捨てが増えてしまいました。
屋外喫煙スペースに、もうひとつの〝ありかた〟を――防災喫煙所
たばこを吸う人にとっては、ほっとひと息つける場所。
しかし吸わない人にとっては、別にいらない場所。
屋外の『喫煙所』には、そんな印象があったかもしれません。
そこで、屋外喫煙所にあらたな役割を与える動きが始まっています。
防災喫煙所とは?
東日本大震災の際、首都圏では公共交通機関がまひし、多くの帰宅困難者が発生しました。
地震だけでなく、豪雨などによる都市型災害も多くなっています。
災害はいつ・どこで起こるかわかりません。
首都圏をはじめとした都市部では、帰宅困難になった場合、混乱や二次被害を防ぐため、職場・学校・一時避難施設など安全な場所に留まることが必要になります。
帰宅困難時を想定した災害に〝街で備える〟ため、整備された喫煙所が、『防災喫煙所』です。
防災意識の向上
屋外喫煙スペース、背の高いパーテーションで囲われていることが多い場所です。
内側でたばこを吸う人にも、外側を通りがかる人にも見えるパーテーション。
その広い面を活かして、防災に関わる情報を伝えます。
日々目にする場所に、防災マップや災害用伝言ダイヤルの使い方、応急処置など『防災に備える情報』を掲示することで、防災への意識向上につなげていきます。
災害時の情報アクセス
帰宅困難時には、交通機関の状況や被害状況などの情報を発信します。
デジタルサイネージを取り入れている場合は、リアルタイムの情報を共有。
一時避難場所や安否確認など、〝帰らない・帰れない〟状況で必要な情報へのアクセスを促します。
- ソーラーパネルを利用した充電・照明設備
- 備蓄用防災倉庫
パーテーション上部にソーラーパネルを設置し、停電が発生しても照明が付けられたり、スマートフォンなどを充電できる設備を用意しています。
ブランケットや救護用品など、帰宅困難になった場合に必要な防災用品を備蓄しています。
さまざまな価値観やライフスタイルが、どんどん変わっていく現代。
『分煙化』をはじめとして、喫煙所をめぐる意識でも新たなアップデートが始まっています。
喫煙所は「いつもそこにある場所」として、多くの人が目にしているはず。
だからこそ、「もしもの時にも集まる場所」になれるかもしれません。
防災喫煙所は、たばこを吸う人・吸わない人を分け隔てなく、すべての人に役立つ場所を目指しています。