ホテル×最新技術!IoT、ロボットなどのテクノロジーで、客室清掃員の人材不足は改善できる!
2019.08.19
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ビジネスホテルの平均的な稼働率は75~85%ほどだといわれており、常に満室に近い状態が続いています(詳細はこちら)。
その影響もあり、特にホテルの評価に直結する仕事を担う客室清掃スタッフは慢性的な人材不足が顕著になっています。
このようなホテル業界の人材不足改善へのアプローチの1つが「最新のテクノロジーの活用」です。
ここでは、IoTやロボットがどのようにホテルを変えていくのかを具体例を交えて紹介していきましょう。
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IoT技術
IoTとはInternet of Things(モノのインターネット)の略で、インターネットを通してあらゆるモノがコミュニケーションを交わすことを指します。IoT技術には様々な応用方法があり、「離れたところにあるモノを遠隔操作する」、「モノにセンサーを付けて遠隔監視する」、「離れたモノ同士でデータを送受信する」などが実現できます。
そして、IoT技術はホテル業界でも活用することが期待されています。
IoT技術を用いた業務の効率化に成功すれば、現在の状況を打破することも可能だといえるでしょう。
ウェアラブル端末
ホテル業界におけるIoT技術の活用方法には色々なものが考えられますが、そのうちの1つが「清掃業務の見える化」です。
現在、多くのホテルで採用されているのは、バックヤードにあるモニターに映像を出力して情報を共有するというものです。しかし、数フロアに1つしかないモニターを頻繁に確認することは困難です。
そこで活用したい端末が、スマートウォッチなどの「ウェアラブルデバイス」です。ウェアラブルデバイスで空室、在室、清掃待ちなどのステータスが常に確認できるようにしておけば、柔軟にスケジュールを組むことができるので効率アップが期待できるので。
また、スマートフォンなどのパーソナルデバイスでも同様の効率化が可能だといえるでしょう。
受付のオートメーション化
続いて紹介したいIoT技術が「自動受付システム」です。
現在、ほとんどのホテルでは受付スタッフが宿泊客に対応しています。受付スタッフが行う主な業務の1つが料金の徴収ですが、これを機器でシステム化できれば人件費を大幅に削減することができます。
ビジネスホテルにおいては宿泊客は予約をしてから訪問することがほとんどであるため、データとマッチングができれば徴収業務の自動化は難しくありません。客室数に合わせて自動精算機を数台設置すれば、それだけで十分に対応可能。実際に自動精算機を生産しているメーカーは何社かあり、このシステムの導入はポピュラーになりつつあります。
翻訳タブレットでインバウンド対応
さらに、IoT技術を有効活用できれば外国人観光客への対応もスムーズになります。現在はインバウンド需要が増えているため、外国人観光客の利用をどのように増やしていくかは大きなポイント。ホテルの業績にダイレクトに影響するといえます。
外国人観光客に対応するために活用できるのが、フロント翻訳用タブレットです。機械翻訳やテキスト翻訳も利用可能ですが、性能が高くない場合が多いのが難点です。
一方、タブレットで翻訳オペレーターに接続することができれば人間の翻訳を通して会話できます。スムーズな意思疎通が可能になり、混乱も避けられるのではないでしょうか。
従業員専用のアプリ
現在、すでにIoT技術を取り入れているホテルも多く、その1つが東京にある老舗ホテル「龍名館」です。
客室清掃スタッフ専用のiPadアプリを開発し、効率化を実現したのです。
このアプリを導入する以前は、各客室の清掃業務に関する指示を紙に印刷して清掃業務スタッフに渡すという方法をとっていました。
また、チェックインの前倒しなど急な予定変更があった場合には無線を使って伝達していました。この方法では完全に伝達ミスを防ぐことができず、無駄も多かったといえるでしょう。
アプリを導入したことによって清掃業務の一元管理が可能になりました。
これによって指示を出すフロントの業務が改善されただけではなく、客室清掃スタッフも効率的に作業を進めることができるようになりました。
さらに、万が一宿泊客が忘れ物をした場合にもスムーズな連絡が可能になりました。現場とフロントの連携が良くなることは、様々な面でメリットがあるといえるでしょう。
業務用掃除ロボットが大活躍!?
先に述べたように、ホテル業界が抱えている問題の1つが客室清掃スタッフの人材不足です。
そこで現在、注目されているのが「業務用掃除ロボット」です。ホテル清掃の現場では、業務用掃除ロボットが行える範囲の業務もマンパワーで行われていることが多いです。
このような状況を改善するために、業務用掃除ロボットを人手に代わる手段として利用するのは、人手不足対策に非常に有効だといえるでしょう。
国内業務用掃除ロボット市場の出荷額は年々増加しており、少しずつ普及が進んでいることが分かります。
業務用掃除ロボットの使用をより進めていくためには、性能向上や使いやすさの向上が必須となるといえるでしょう。また、ホテル側としても業務用掃除ロボットを受け入れる意識を高めていくことが重要になります。
清掃ロボットの導入事例
そんな中でも、すでにホテルの清掃業務にロボット掃除機を導入しているホテルはあります。それが長崎県のハウステンボスが運営する「変なホテル」です。
変なホテルは2016年にロボット掃除機「ルンバ980」を計6台導入しました。これはアイロボット社が開発した家庭用のロボット掃除機で、障害物が多い環境下でもまんべんなく掃除することができます。
変なホテルでロボット掃除機を導入したのは、コスト削減が目的です。ロボット掃除機以外にも、フロントやコンシェルジュ、ポーターサービス、ロッカーサービスなどにもロボットを採用しており、積極的にロボットを利用する姿勢がうかがえます。
結果は大成功で開業当時は30名体制で運営していたのに対し、現在の従業員数は7名。2人ずつ公休を取るため、1日あたりの従業員数は5名になります。
144室あるホテルをたったの5名で運営することができるのは、やはりロボットによる省力化の効果が大きいといえるでしょう。
そして、変なホテルで採用されているルンバ980以上に期待されているのがiRobotから発売されている「Roomba i7+」です。
従来のロボット掃除機との大きな違いは、ゴミ捨てまで自分でするということです。ルンバ30体分のゴミをドックに溜められるのも大きなポイントで、ホテルの客室清掃での活躍が期待されています。
現在はそれほど普及しているとは言えない業務用掃除ロボットですが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたって需要が増えるとの見方もあります。
またロボットに限らず、ヒット作が出ると普及に弾みが出るます。世間で話題になるような業務用掃除ロボットが開発されれば、導入するホテルの数も一気に増えるかもしれません。
テクノロジーでホテルが大きく変わる可能性も
最新のテクノロジーがホテルに導入できれば、多くの面でメリットを得られます。客室清掃スタッフの人材不足の問題に関しても、業務用掃除ロボットが導入によって一気に解決に近づくといえるでしょう。
実際に最新テクノロジーを取り入れ始めているホテルもあり、業務効率化やコストダウンに成功しています。
今後ホテル業界においては自動化が進んでいくと予想されており、それに伴って業績も上向きになる可能性があります。業界全体として、将来は明るいといえるのではないでしょうか。