ホテルと旅館の違いは部屋の数と広さ!和室、洋室の定義と客室清掃の違いはわかりますか?
2019.10.09
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上の写真はホテルと旅館のどちらに分類されると思いますか?
ホテルと旅館の定義は大まかには部屋の数や広さによって分かれますが、それ以外でも細かな違いがたくさんあります。
今回は、業界人でも意外と知らない人が多い「ホテル・旅館・民宿」の定義と和洋室の違い、さらにそれぞれ客室清掃のポイントについて解説します。
ホテルと旅館の違いを知りたい人や清掃するうえでの違いを把握したい人は、ぜひ参考にしてください。
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ホテル・旅館・民宿の定義
「旅館業法」という法律において、ホテル、旅館、簡易宿所(民宿やペンション等)は以下のように区別されています。
ホテル | 旅館 | 民宿やペンション | |
---|---|---|---|
和式or洋式 | 主に洋式 | 主に和式 | 問わない |
客室数 | 10室以上 | 5室以上 | 問わない |
客室の広さ | 1部屋あたり9平方メートル以上 | 1部屋あたり7平方メートル以上 | 全客室合計で33平方メートル以上 |
入浴設備等 | 適当な数の洋式浴室またはシャワー室 | 適当な規模の入浴設備 | 適当な規模の洗面設備 |
トイレ | 水洗かつ洋式のものがある | 適当な数がある | 適当な数がある |
施錠 | 出入口および窓は施錠できること | 問わない | 問わない |
その他 | 客室同士や客室と廊下は壁で区切られていること | 問わない | 問わない |
※出典:厚生労働省「旅館業法概要」
それぞれを詳しく確認していきましょう。
ホテルの定義
旅館営業法では「ホテルは洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる施設」であると定義されています。
一般的にも「ホテルといえば洋式のビル」、「少なくとも和風な建物ではない」というイメージがある人も多いのではないでしょうか。
また、「ホテルにはたくさんの部屋がある」、「壁がしっかりしていてプライバシーが保たれている」という印象を持っている人もいると思いますが、これらには旅館業法が関係しており、そのような条件満たしている建物でないとホテルとは認められないことになっているのです。
他にも「共同トイレは男子用と女子用の区別をする」といった決まりもあります。
この「共同トイレ」とは客室にあるものではなく、廊下などの共有スペースにあるものをいいます。
客室内のトイレには男女の区別がなくても構いません。
旅館の定義
旅館は「和」を貴重とした建物のことです。
ホテル同様入浴設備についての決まりがありますが、旅館の建物内になくても近隣に公衆浴場がある等で入浴に支障がなければ問題ないとされることがあります。
共同トイレについてはホテルと違って和式でもよく、水洗式でなくとも構いません。
また、トイレに男性用女性用の区別がなくても問題ないとされています。
民宿、ペンションの定義
民宿やペンションは、ホテルまたは旅館の定義を満たさない宿泊施設である「簡易宿所」に分類されます。
客室の数に規定はなく、「広さが合計で33平方メートル以上であること」という決まりがあるだけなので、33平方メートル以上の部屋が1つあるだけでも要件を満たします。
なお、もし階層式寝台(2段ベッド等)を設置する場合、上段と下段の間隔はおおよそ1メートル以上開ける必要があります。
トイレについては男女別に最低2ヶ所必要とされていますが、2018年に旅館業法が改正された影響で、共同トイレを1つ設置するだけで可という自治体もあります。
1つしかトイレがない民宿やペンションの場合は、当然、男女共用トイレになります。
和室と洋室の定義
客室には「和室」と「洋室」があります。
なんとなく「和室」と「洋室」のイメージはあると思いますが、具体的に異なる点を確認していきましょう。
和室 | 洋室 | |
---|---|---|
床 | 畳 | フローリング |
寝具 | 布団 | ベッド |
収納 | 押入れ | クローゼット等 |
出入口等 | 襖や障子 | ドア |
壁 | 壁紙がないことが多い | 壁紙が貼ってあることが多い |
柱 | 部屋の中から見える | 部屋の中から見えない |
靴のまま入れるか否か | 入れない | 入れることが多い |
和室の定義
いわゆる日本風の部屋のことを「和室」といいます。
法律的な決まりや定義は特にありませんが、畳が敷いてあり、襖や障子で部屋が区切られていること等が和室の要件とされることが多いです。
また、お寺や神社などの畳のない板張りの部屋の特徴である「柱が見えていること」を和室の条件として考えている人もいます。
さらに、靴やスリッパを履かず裸足または靴下や足袋で室内に入れることも和室の条件とされることがあります。
板張りの部屋はある意味ではフローリングとも考えることができるので、外国人からは洋室だと思われる可能性があることも覚えておきましょう。
洋室の定義
いわゆる西洋風の部屋が「洋室」です。
こちらも和室と同様に法律的な決まりや定義があるわけではありません。
洋室には畳が敷かれておらず、基本的にフローリングです。
また、壁には壁紙が貼られているなどの特徴があります。
靴で室内に入れることも洋室の特徴に挙げられるでしょう。
布団ではなくベッドが寝具になっている部屋はほぼ洋室ですが、近年のホテルや旅館には「和洋室」等といって畳とベッドが両方とも存在する部屋も用意されています。
和室と洋室の客室清掃の違いとは
ここからは和室と洋室、それぞれの客室清掃における違いを見ていきましょう。
和室の清掃
和室の場合、チェックアウトしたお客様は布団をそのままにしています。
このため布団の上げ下ろしが必須となり、これが腰や膝に負担をかける要因になるので、求人広告に「全室洋室なので布団の上げ下ろしがありません」ということをアピールして清掃員を募集しているホテルもあります。
また、和室は畳がメインなので「畳の掃除」という要素が加わります。
畳に掃除機をかける場合は掃除機の車輪で畳が傷まないように、掃除機を手に持って移動するよう指導している旅館やホテルもあるかもしれません。
掃除機が重い場合はかなりの体力が必要になると考えられます。
さらに、床の間のある和室の場合は床の間部分の拭き掃除も行わなくてはなりません。
その代わり和室がメインの旅館の場合、個々の客室にお風呂がないことが多いので、洋室にありがちなお風呂の掃除は省略できることがあります。
洋室の清掃
洋室の場合は布団の上げ下ろしがありませんが、その代わりに「ベッドメイキング」が作業に加わります。
重いベッドをずらしたりマットレスを動かしたりすることもあるので、ある程度は力仕事になります。
また、ホテルの部屋にはユニットバスが設置されていることが多いので、シャワーカーテンの掃除、取り換えなども必要になります。
洋室の浴室を清掃するポイントは、入室後すぐに換気扇をオンにしてドアを全開にして換気することです。
トイレやバスタブに水滴が残っていてはいけないので、清掃の最後に「拭き上げタオル」等と呼ばれる清掃用のタオルで水滴をキレイに拭き取ってください。
洋室の場合、床の掃除はフローリングならモップ、絨毯なら掃除機を使うことが多いので、畳の掃除に比べて作業負荷は軽いかもしれません。
しかし洋室がメインのホテルは旅館より客室の数が多い可能性があるので、全室を掃除するためにスピードを要求されることがあります。
洋室と和室のどちらが楽か、という点についてはケースバイケースと考えて間違いはないでしょう。
ホテルと旅館、和室と洋室の違いを知っておこう
ホテルは洋室がメインで部屋数が多く、旅館は和室で部屋数が少ない傾向があります。
また、1部屋の最低面積はホテルの方が広いため、1部屋あたりの清掃面積が多くなるかもしれません。
一方和室には布団の上げ下ろし作業がありますし、畳が傷まないように掃除する配慮も必要です。
それぞれの特徴と違いを知って、ベストな清掃方法を学んでいきましょう。