ホテル・清掃業界で増える外国人人材。その動向と課題、メリットを徹底解説
2019.11.13
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近年、日本で働く外国人は増加の一途をたどっており、ホテルや清掃業界でも例外ではありません。
外国人を雇うことには様々なメリットがある反面、課題も少なからず存在します。
ここではホテル業界と清掃業界の両方で課題に挙がっている外国人人材の動向や、雇い入れるメリット、雇入れの注意点について解説していきます。
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宿泊業界は2020年に外国人雇用が増えると予想!その理由とは
表題の通り、2020年にはホテル等の宿泊業界において多くの外国人が雇用される予想されています。
その根拠を以下でいくつか挙げていきましょう。
ホテルの林立、オリンピック需要
日本は国を挙げて外国人旅行者の訪日を促しており、2018年には年間の訪日旅行者数が初めて3000万人を突破しました。
今後も政府は同方針の継続を掲げていて、2020年には4000万人の外国人旅行者の訪日を目指しています。
その最大の呼び水として期待されているのが、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックです。
オリンピック・パラリンピックの期間中は数多くの外国人が来日して宿泊施設を利用することが容易に想像されます。
この宿泊需要に対応するにはそれに応じた数の宿泊施設が必要となります。
2018年以降に開業予定の宿泊施設は全国730施設にのぼり、部屋数にしておよそ11万室と算出されています。
これはつまり、宿泊者がチェックアウトした後で清掃すべき部屋が11万室も増えるということです。
労働人口の減少等もあって日本の各業界で人手不足が叫ばれている中で、約11万室もの清掃を行えるだけの人手を確保するには、様々な方法を模索しなければなりません。
その1つの解決策として注目されているのが「外国人雇用」です。
日本人労働者だけではカバーできない部分を、外国人労働者で補うことで人手を確保しようという動きが活発になることは想像に難くないのではないでしょうか。
※関連記事:【2019年版】ホテル業界のスタッフや清掃員は人材不足?東京オリンピックの影響や業界の動向をまとめました
2019年にスタートした「特定技能」
また、2019年からスタートした外国人の在留資格「特定技能」も外国人労働者の増加に大きな影響を与えると考えられています。
従来、外国人を雇用するには留学ビザで来日している留学生を学業に支障のない程度のアルバイトで雇うか、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を持った外国人を選択するなどの必要がありました。
しかし後者の場合は大学などで履修した専門知識を活かした専門職として雇うことが条件となっており、客室清掃等の作業にカテゴライズされる業務をメインとして勤務させることはできませんでした。
それが今回の新制度によって「特定技能ビザ」を所持している外国人は学歴・職歴等に関わらず、客室清掃を含めた幅広い仕事に従事することができるようになりました。
これにより、客室清掃でも外国人を使うことが可能となったため、今後は客室清掃分野に外国人の雇用が増えることが予想されます。
既に観光庁のウェブサイトには「宿泊分野における新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)」というページが用意されており、特定技能を持った外国人を宿泊分野に雇用できることが国民に周知されています。
※出典:観光庁「宿泊分野における新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)」
ホテル、客室清掃員の外国人雇用のメリット
特定技能と人材不足、外国人観光客の増加という要素が色濃くなるなかで、今後、客室清掃の分野における外国人労働者の増加傾向は強くなると考えられています。
ここからは外国人を雇用するとどのようなメリットがあるのかを考えていきましょう。
言語によるメリット
外国人は日本語以外の言語を母語としている可能性がとても高く、対応している言語圏の国から日本にやってきた宿泊客との会話をスムーズにできることが多いです。
まだホテルの仕事に慣れていない雇い始めの時期であっても、言語に関しては通訳や翻訳といった業務をこなすことができます。
フロント業務で活躍できるのはもちろん、客室清掃においても外国人の宿泊客の要望などにも迅速・柔軟に対応できるので、顧客満足度の向上やクレームの減少にも期待できます。
各業務については都度教育が必要になるので、外国人スタッフに対応できる教育係の配置が、より良い組織づくりのポイントとされています。
就労意識によるメリット
日本まで働きに来る外国人は、労働に対する意識が高い人が多いとされています。
母国の家族へ仕送りしなければならないなどの事情を抱えている外国人は少なくなく、特にそのような人たちは真面目に働く傾向が見られます。
そのような必死に働く姿勢が一緒に働く日本人スタッフにも波及すれば、客室清掃はもちろん、ホテル全体にとってもプラスに働く可能性があります。
人手不足解消によるメリット
以前述べましたが、少子高齢化などの影響もあって日本の労働者人口は減少しています。
これに対して客室清掃の需要は今後高まる可能性があるため、人手不足の深刻化が懸念されています。このような状況の中で外国人労働者を受け入れることは、人手不足の解消に一定の効果があると期待されています。
ホテル、客室清掃員の外国人雇用の注意点
以上のように外国人を雇うメリットは大きいですが、注意点も存在します。
ここからは注意すべきところに言及していきます。
ビザ(在留資格)に注意!
外国人を雇うにあたってフロントを含むホテル全体が、第一に注意するべきなのは「ビザ」の問題です。
一歩間違えれば不法就労ともなりかねないので、この辺りは必ずクリアにしておきましょう。
例えば、留学ビザでアルバイトとして働いていた外国人を正社員として雇うには、就労ビザに切り替える必要があります。
しかし外国人の中には「雇ってもらえたということは自分のビザには問題がなかったということだ」あるいは「仕事に就いたのだから留学ビザは自動的に就労ビザに切り替わるはずだ」と勘違いしている人もいます。
ビザの手続をしっかりしてもらうことで防げる部分ではあるので、雇い入れに当たっては忘れずにチェックしてください。
労働条件に注意!
こちらは客室清掃のために外国人を雇い入れるときに特に注意すべきことです。
まず、外国人という理由だけで日本人よりも不利な条件で働かせることは禁止されています。
日本人と同じ客室清掃をさせるのであれば、外国人にも同じ待遇で給与の支払いなどを行わなければなりません。
また、既に述べたようにビザの内容によっては客室清掃業務をメインとして働かせてはいけない場合があります。
フルタイム勤務で客室清掃を行っていいのは基本的に「特定技能ビザ」の外国人だと覚えておきましょう。
このため客室清掃をさせるのであれば日本人と同じ待遇にして、適したビザを取得しているかどうかを前もって確認しておいてください。
さらに、宿泊施設に特定技能の外国人を雇う場合は、派遣形態ではなく「直接雇用」をする必要があるなどの決まりが存在するので、この点も注意しておきましょう。
外国人を雇うときは注意点を守ろう
人手不足の一方で客室清掃の需要が高まることが予想される将来において、外国人を雇うメリットは大きいです。
しかし在留資格や労働条件によっては雇入れが認められない可能性もありますし、場合によっては不法就労にも繋がりかねません。
法令に則って適切な運用を心掛けてください。