世界のホテル業界がCSRに注力中!動向と帝国ホテルなどの事例
2019.12.25
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CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった略称です。「持続可能な開発への企業責任」という意味があります。
世界のホテルはこのCSRを非常に重要視していますが、はたしてどういった取り組みがなされているのでしょうか?
この記事ではCSRに関する活動の具体例を挙げながら紹介していきます。
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世界のホテルのCSR事情
予め述べておきますが、日本のホテルもCSRに関する取り組みを行っています。
以下の4分野を実践している事例が多いようです。
・企業コンプライアンス
・社会貢献
・環境対策
・リスクマネジメント
これら以外には、食品偽装問題の影響で「購買管理システムの透明化」を掲げている例が見られます。特に強調されがちなのは「環境対策」や「社会貢献」であり、これらに力を入れていると宣言しているホテルも多く存在します。
しかし「持続可能な開発」を掲げているホテルはまだそう多く見受けられません。そこで次からは「持続可能な開発」を実行している他国の取り組みを紹介します。
CSRの世界動向
ここでは観光立国であるフランスの事例をご紹介します。フランスではホテルが星1から星5そして「パラス」という6段階に格付けされています。
この格付けには以下5つの指針が設けられています。
・親切で丁寧なおもてなし
・快適なサービスの提供と正確な情報の伝達
・サービスの標準化と顧客満足度の管理
・ハンディーキャッパーへの配慮および施設
・環境問題と持続可能な開発への貢献
このうち「ハンディーキャッパーへの配慮および施設」「環境問題と持続可能な開発への貢献」は、CSRを意識して近年新たに加えられたものです。
フランスではこれら5つのポイントに対する取り組みを評価して点数をつけ、点数の合計に応じて格付けされます。
つまりCSRへの取り組みがホテルの格付けに直接関わる仕組みとなっており、ひいてはCSRへの本気度が問われるシステムになっているのです。
グリーングローブのCSR認証
グリーングローブとは、旅行ビジネスにおける持続可能な開発を審査して認証する国際的基準です。グリーングローブの認証を受けた場合、そのロゴを使えるようになります。このロゴを使っている企業はCSRに貢献しているとして各方面から高い評価を受けます。
2010年時点で認証を受けていたホテルはヨーロッパに数軒ある程度でしたが、それから4年程度で90ヶ国、365のホテルが認証を受けるに至りました。しかし日本で認証を受けたホテルは、2019年11月下旬時点でわずか3軒しかありません。
現在欧米の企業と契約をするにはCSRに賛同しているかどうかが重要な要素となっており、CSRへの取り組みをアピールできる認証を受けることは日本企業にとっても検討すべき課題となっています。
日本のホテルのCSR事例:帝国ホテル
帝国ホテルでは健全な事業活動を通じて、コンプライアンス・環境への配慮・社会貢献といった、経済・環境・社会への責任を果たすための活動を行っています。
コーポレートガバナンス体制の構築
帝国ホテルでは経営の透明性、健全性、効率性を向上させることで持続的な発展を行い、それによって社会的な責任を果たしていくことを重要と考えています。
これを実現するために、社外取締役の選任による取締役会の監督機能の強化、監査役および内部監査の連携による経営の監視体制の充実、執行役員制度の導入による経営の健全性と効率性の向上などの策がとられています。
また、社員への各種研修によってコンプライアンス違反や情報漏洩の防止、ハラスメントの予防などに対する取り組みを行っています。
環境活動
省エネルギー、リサイクル率向上、環境に優しい物品への置き換えなどについて、それぞれを担当するチームを作り、エコ活動に力を入れています。
こう言った取り組みが認められて、環境省と環境人材育成コンソーシアムが主催する「環境人づくり企業大賞」で3年連続の受賞を果たしました。
社会貢献
アジアアフリカ各国に給食を寄付しています。
また、災害に見舞われた日本各地で復興支援を行うなど、積極的な活動を行っています。
安心と安全への貢献
お客様の生命と健康を守るために、食の安全に関する研修を行うことで食中毒の危険を排除しています。
また、防犯・防災について定期的に各種訓練を行い、応急救護の有資格者を増加するなどの取り組みを行っています。
日本のホテルのCSR事例:パレスホテル
パレスホテルではお客様の安心と安全を常に最優先とする伝統を守り続けながら、以下のようなCSR活動を行っています。
防災対策
2012年に完成したパレスホテル東京とパレスビルは最新の制振構造を備えています。また、災害に対応するために大規模地震対応マニュアルなどを整備し、定期的に訓練を行っています。
パレスホテル東京自衛消防隊は丸の内消防署主催の自衛消防訓練審査会に毎年出場しており、男子隊は2013年・2016年に優勝、女子隊は2014年・2016年に準優勝するほどの実力を持っています。
食の安全
各厨房は食材を衛生的・効率的に管理する最新の設備であり、それを扱うスタッフにも定期的な食品衛生講習会や食品事故に備えた訓練の実施を実施し、食の安全の徹底を図っています。
また、かつて世間を賑わせたメニューの誤表記が発生しないようにメニュー管理委員会を設置し、適切に表示されているかをチェックしています。
環境保護
1992年より生ごみを発酵処理し肥料化するリサイクルを実施しており、その肥料を特定の農家で使ってもらっています。そしてホテルではその農作物を使うというリサイクルを実現しています。
また、10年以上前から厨房排水や雨水を再生した「中水」を、パブリックエリアや客室を除くオフィスなどのトイレに使うなどして節水に励んでいます。
さらに高効率の「冷暖房機器」「太陽光発電」「コジェネレーション」などの設備を導入し、オフィス棟であるパレスビルには外気の影響による空調負荷を最大限抑えるための「エアフローウインドウ」を使用しています。
こういった努力によって基準ビルに対して30%もの省エネ化を実現しています。
日本のホテルのCSR事例:ホテルオークラ東京
ホテルオークラ東京は高品質な施設とサービスの提供によって社会の発展に努めてきました。以下のようなCSR活動を行い、または既に行っており、社会へ貢献していくと宣言しています。
環境への取り組み
以下の取り組みが評価され、国土交通大臣より省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」に認定されています。
・効率的なエネルギーシステムの構築
・地域との連携も考慮した災害時の機能維持
・クールスポットの形成
・省CO2対策
また、発生した全ての廃棄物に対して分別を徹底化して環境負荷を減らしているほか、各種書類の電子化を進めるなどして紙資源の節約にも取り組んでいます。
各種委員会の設置によるコンプライアンス遵守やリスクマネジメントなどの強化
ホテルオークラ東京では様々な委員会を設置することでCSRの実現を図っています。以下にいくつか例を挙げます。
・コンプライアンス委員会:遵守状況の調査や検証のほか、啓蒙活動などを行う
・情報セキュリティ委員会:企業情報や個人情報の取り扱いについて重要な問題の把握や対策を検討する
・防犯防災委員会:災害避難訓練や、防災に向けた検討を行う為の全社会議を定期的に行う
・食品衛生管理委員会:食品の安全と品質に関する理解を促すため各部の取り組みを報告する
・内部統制委員会:各委員会の活動計画と実施状況を統括し、法令順守と企業価値向上に努める
CSR重視は世界のトレンド
日本でもCSRに取り組んでいる企業は増えていますが、海外では契約を左右するほどの影響力を持っています。観光立国フランスではホテルの格付けにも利用されているほどです。
本記事では各ホテルが行っている取り組みの一部を紹介するに留まりましたが、参考にできる部分は参考にしつつ、CSRに取り組んでみてはいかがでしょうか。