塗料を、溶剤に混ぜて塗布するのではなく、粉状の原料のまま静電気の力を使って対象に吹き付ける技法です。このままでは簡単に剥がれてしまいますが、乾燥炉で溶かしてから固めることで塗膜を形成することができます。
最大のメリットは「VOC(揮発性有機化合物)」がゼロであることです。従来の塗料 はVOCが大量に含まれており、光化学スモッグやシックハウス症候群などの原因物質 として問題視されています。粉体塗装は有機溶剤を全く使用しないため、安全性の高い 新しい時代の塗装方法として注目されているのです。また、「塗膜の耐久力が高い」「塗料のロスが少ない」「防さび性が高い」といったメリットもあります。
一方でデメリットも少なくありません。まず、専用の設備を用意する必要があり、現場での塗装作業には向かないという点が挙げられます。静電塗装の設備が必要である上に、屋外での作業では空気中の異物が入り込むことにより塗装の品質が低下してしまうのです。次に、30ミクロン以下の薄い塗膜形成には向かない点が挙げられます。他にも「塗装できる対象物が限定される」「少量多品種や短納期には対応が難しい」という点があり、デリケートな塗装技法であることがわかります。
粉体塗装を有効活用するためには、デメリットを回避できる条件を選ぶこと、つまり粉体塗装に向いている条件で使用することが重要なのです。